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「まさか、この店舗なの?」

 クー・フー・リンは声出して驚く。さすがに大声を出すと他のお客に迷惑なので、ボリュームは小さめだ。

しかし、店舗名は間違いなく――この場所である。灯台もと暗しとはよく言った物だ。

(じゃあ、何処に端末があるとでもいうの?)

 周囲を見回しても、それっぽい端末は確認出来ず。二階にはないという事なのだろうか?

しかし、一階に設置されているのはクレーンゲームやメダルゲームと言った物であり、置いてある様子がない。

モニターから若干離れた所に案内掲示板を発見したのだが、三階のエリアはゲームコーナーではなかった。どうやら、ボーリング施設らしい。

では、肝心の筺体は何処にあるのか? 彼女が数分悩み、エレベーターに乗り込んで一階へ向かおうとした時、その光景を目撃する事になる。

(これって、まさか?)

 駐車場の様子がエレベーターの窓部分から見える。そこには相手プレイヤーと並走していたレッドダイバーの姿が確認出来た。

どうやら、屋内にある別のアミューズメントエリアを使用している様である。これには彼女も別の意味で驚く。

ゲーセンとしてだけでなく、この店舗ではカラオケ、ダーツ、ビリヤード等の施設もあり、ある意味でも草加市内では最大規模のアミューズメント施設だろう。

それでもARゲーム設置にはジャンルを絞っていたのだが、まさかリズムゲームプラスパルクールを導入していたとは予想外である。

リズムゲームプラスパルクールに関しては関東地方限定と言う事もSNS上で拡散していただけに、驚きの声があったという。



 エレベーターで一階に下りたクー・フー・リンは設置されているエリアへと移動する。

既に他のギャラリーも見学をしているが、こちらのギャラリーは参戦する気配がない。観戦だけと言う気配もした。

(レッドダイバーの実力は、そこそこあるように見えるが微妙な動きがプロゲーマーではないような――)

 設置エリア近くにもセンターモニターは設置されているが、モニターの大きさは四〇位か?

あまりにも巨大なモニターを置けるスペースがないのではなく、むしろARゲームは導入し始めたばかりと言うべきだろう。

「どう考えても、あの実力は――」

「プロゲーマーは他にも存在するだろう。レッドダイバーに同じような実力があるとは思えない」

「むしろ、レッドダイバーはプロゲーマーデビューしなくても充分だとは思うが」

「どういう事だ?」

「プロゲーマーには真田さなだシオンのようながなるべきであって、レッドダイバーは難しい」

「レッドダイバーがバーチャルアバターとは限らないだろう?」

「ARゲームをプレイしているバーチャルアバターはいるにはいるが――」

 様々なギャラリーの声がするのだが、それにクー・フー・リンが耳を傾ける事はない。

むしろ、彼女は別の意味でもレッドダイバーの存在に疑問を持つ事になった。

(レッドダイバーは別のプレイヤーと言う説がSNS上にはあるというのに、ここで別の説が拡散するのか?)

 誰なのかは不明だが、レッドダイバーにはいわゆる中の人がいる事が示唆されていた。しかし、それを鵜呑みにするようなプレイヤーはいない。

SNSにはまとめサイトに代表されるようなフェイクニュースを多く掲載しているサイトもあるからである。

どちらにしてもレッドダイバーの一連のプレイを生で見る事は出来た。ここで目的は達成されたも同然だろう。

しかし、彼女は本当にあのレッドダイバーが本物なのか見極める必要性があった。

その為にも別の場所へ向かう事で、それを確かめられるとセンターモニター近辺の混雑を見て悟ったのである。目的は達成したので、一応は移動する事になった。



 その後、クー・フー・リンはゲーセンから若干離れた場所にあるアンテナショップを訪れる。

スペースとしては百人位が入る程度のスペースしかなく、センターモニターは一台と言う事で小規模店舗と言うのが分かるだろうか。

小規模とは言ってもネットの接続環境があったり、フードコートスペースもあるので油断は出来ないだろう。

(ここには、アレが存在するという事だが)

 周囲を見回す彼女だが、不審者と言う訳ではない。あくまでも何かを探しているだけなのである。

アンテナショップには監視カメラもあり、下手にここで犯罪行為を起こそうと考えない方が身のためだろう。

下手をすればガーディアンが駆けつける事になり、自身が炎上する恐れもあるからだ。

「ビンゴ!」

 大声を出すと一般客にも迷惑になるので、ボリュームは抑え気味。

彼女が視線の前に見えてきた機械、それこそがARゲームの端末なのである。しかし、ただの端末ではない。

この端末こそ、他のARゲームのプレイヤーも検索可能なマルチ端末なのだ。

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