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 ファフニールが来日した理由が真田さなだシオンとのマッチングだけとは思えないが、何かがおかしいと思うのは当然か。


 海外からの観光客が草加市に多く訪れているのはARゲームが話題となってからである。


 他のゲームであれば、オンラインで接続すれば問題はないはずだ。それなのに、わざわざ来日してまで――。


 まとめサイトでも詳細は伏せられているのだが、真実が知られる事で都合が悪くなるのかは一切不明だ。


(余計な事をしてくれる――)


 何時もとは違う谷塚駅近くの商業ビル、その二階にそこそこの規模を持つインターネットカフェがある。


 そこでタブレット端末を片手に情報を検索していたのは、背広に眼帯姿という周囲から見れば異様とも言えるヤルダバオトだ。


 しかし、彼がヤルダバオトなのを知っている人物がカフェ内には一切いない。ヤルダバオトがチェックしている動画はシオンとファフニールの対決ではないのだが、ファフニールの動画である事に変わりはない。別プレイヤーの対戦動画と言う違いだけである。


 こちらではファフニールが勝利しているので、おそらくはシオンとの対戦後に撮影したか、別の対戦したプレイヤーがアップしたのかもしれない。


(FPSランカーと言う話だが、本当にそれだけの実力者なのか)


 ヤルダバオトもシオンの実力に関しては懐疑的だ。シオンと言う同盟プレイヤーが多い事もあって、どのシオンなのか把握していないのもある。


 それでもFPSでシオンを名乗るプレイヤーは絞れるはずなのに、それを彼は実行しない。


「まずはレッドダイバーを探るか」


 レッドダイバーの目的、それはSNSの正常化と言うのがまとめサイトでの見解だ。


 しかし、特撮版だと正常化以外にも別の目的があったらしい。ヤルダバオトが調べているのは、別の目的の方である。



 ある雨の日、数日が経過した木曜日でもある。小雨気味であれば屋外ARゲームでもサービスしている機種はあるだろう。


 しかし、この日に限って言えば小雨ではなく普通の雨雲が草加市内の上空にあった。その為、ARゲームで屋外系は中止となっている。これが屋外系ARゲームでは最大のネックと言うべきか。


(屋内フィールドのリズムゲームプラスパルクールは――)


 谷塚駅よりは徒歩10分位の離れた系列店舗のゲーセン、そこの2階にある待機席に座って何かを検索しているのはマスク姿のクー・フー・リンだ。


 彼女はリズムゲームプラスパルクールでも屋内でプレイ出来る場所がある、というSNS情報を頼ってきたのだが、発見出来ずにいた。


【リズムゲームプラスパルクールも屋内系カテゴリーではないのか?】


【あれはフィールドを走るタイプのゲームだ。屋外系では?】


【しかし、リズムゲーム系は大抵が屋内フィールドタイプのはず】


【確かに屋内でライブ体験、DJ体験と言ったタイプは屋内機種だ。しかし、あれは明らかに――】


【2つのジャンルを持つARゲームには、使用するフィールドの広さによってカテゴリーが別れるという話もある】


【だが、あれを屋内で稼働するにはドーム球場クラスの広さが必要では?】


 スマホで有力情報を探す彼女だったが、それほど役に立ちそうな情報はない。しかし、探せばあるかもしれないという事だけは事実らしい事が分かる。


(どちらにしても、アレを屋内で稼働するなんて――?)


 彼女がスマホから視線を別の場所へ向けるのだが、そこに設置されていたのはARゲーム用のセンターモニターだった。


 これが置かれていると言う事は、ARゲームがある事を意味しており、ゲームの機種によっては店舗検索も可能だろう。


(あれって確か――?)


 センターモニターに映し出されている映像、そこにはレッドダイバーが映し出されていた。しかも、特撮版の方である。


 映像の方はマッチングした時の物であり、四人同時バトルにも見えるだろう。それに加えて、画像の周辺に表示されたアイコンをチェックすると――。


(ライブ映像? まさか、屋内フィールドでリズムゲームプラスパルクールを?)


 まさかのビンゴと言う状況に彼女は驚くしかない。自分にもチャンスがあるのだろう、と感じる瞬間だった。


 ライブであれば場所を検索しようとしたが、他プレイヤーの表示から埼玉剣である事はすぐに分かる。


 しかし、その店舗名には疑問を持つ。この店舗はARゲームを専門に置いていた記憶がない。更に調べると、その店舗の場所は――。

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