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 ARゲームフィールドが展開され、アーマーのカスタマイズを行う真田さなだシオンは、チュートリアルモードに突入していた。


《リズムゲームプラスパルクールは、一風変わったリズムゲームです》


 このメッセージの出現後、シオンのARバイザーにはチュートリアルの動画が流れ始める。


 ダミープレイヤーは汎用スーツを思わせるが、そこは気にしない。そして、走り出すと同時に何か光るパネルを発見し、そこでプレイヤーが止まった。


《演奏は、基本的に光るパネルをタッチする事で演奏を行い、スコアを稼ぐ事が勝利条件になります》


《これとは別に、一直線のルートパネルも存在します。これはそのルートを通らなければいけません。ルートを外れると、ミスと判定されます》


 長方形のパネルは普通にタッチするだけで認識し、直線に光るルートパネルはルート通りに進む必要性がある。


 両側には特にパネルに該当する物はないので、道路に表示されたパネルだけでよいらしい。別のゲームだと、両腕で演奏する様なラインもあるのだが。


《演奏失敗によるゲームオーバーはありません。楽曲が終わるまでにゴールへたどり着くまで、諦めないでください》


 演奏が失敗し、ゲージがゼロになるとゲームオーバーか演奏失敗判定があるのだが、この場合は問題がないようだ。表示されているゲージは、あくまでもゴール時のスコアとして加算される形式らしい。


(乗り物系も使えるという事みたいだけど、現状では普通に走るだけの方が――)


 ARレースゲームで使用する物はさすがに使えないが、乗物の部類も使えるというのをホームページで見ていた。


 コースによっては走るがメインとなるので走った方が早いのだろう。パルクールと言うタイトルがあるだけに。


(雨が降ってきて、視界が悪くなったら――それこそ飛行ユニットは不利になる。こう言う形のゲームでは空を飛べるだけでもアドバンテージがある以上、無理な相談だけど)


 さすがに飛行は周辺環境的にも不可能のようだ。ライブ配信用ドローンが周囲を飛んでいる状況を見れば、一目瞭然である。


 シオンの方は、それを考慮してのランナーユニットを使用するが、ファフニールの方はブースターユニットを使うようだ。ブースターに関しては飛行ユニットではないので、チートには当てはまらない。あくまでも加速装置である。



 対するファフニールはチュートリアルを飛ばす事はしないが、シオンの様に細かくチェックした訳ではない。


 日本語に詳しくない訳ではないと思うが、あくまでもパネルをタッチする事が分かれば充分なのだろう。


 両者ともに選択可能な楽曲は、そう多くない。バイザーに表示されたCDジャケット風のアイコンは、わずか三十と少しだろうか?


 何故かと言うと、いきなりゲームオーバーや演奏失敗でプレイヤーにトラウマを与えないように、選曲の仕様も初プレイでは違う物になっていた。


 難易度に関しても全ての楽曲が【EASY】表記となっており、簡単な譜面である事を分かりやすくしている。


 【EASY】が一番簡単で、次に【MAIN】、難しいのは【SUPER】、最難関は【SUPEREX】の四段階のはずだが、選択出来る難易度は一個しかない。


(成程。まずは慣れろという事か)


 シオンは選択出来る難易度が一個しかない事を察した。ファフニールの方はそれしか選べないので、選択の余地がないと考える。


 しかし、選べる難易度は【EASY】だけなのだが楽曲によっては難易度の幅が異なっていた。


 最終的に二人が選んだ曲は全く同じだったのである。同じであれば、コースは全く同じと言う事になるらしいが――。


「同じコースを走る以上、ある意味でもバトルになるという事か」


 レースを妨害するのは危険なプレイとして禁止されており、意図的な進行妨害はペナルティが避けられない。


 それはファフニールの方も把握している。FPSではゲームによっては味方プレイヤーを誤射する事がペナルティで減点される事を知っているからだ。


『真田シオン、お前を――倒す』


 ファフニールがスタートを前にシオンの方を振り向いた。その後、お互いにスタートラインに建つと、ARバイザーのインフォメーションも切り替わる。


《まもなく、バトルを開始します》


 ここからは他のプレイヤーのマッチング介入もない。このフィールドは完全にシオンとファフニールのステージになった瞬間でもあった。


「ここはFPSとは違うフィールドよ。強気でいられるのも、今の内」


『それはお互いに同じだろう』


 お互いに初めてのフィールドなのは間違いないだろう。それに加え、プレイスキルもほぼ同じ。勝つかどうかはゲーマーとしての経験値が物を言うかもしれない。

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