第4話:第二の刺客-ファフニール登場-
埼玉県草加市、そこはいつしかARゲームの聖地と呼ばれるほどにゲーム環境が整備され、今やARゲームと切っても切れない存在となっている。
道路はARゲーム専用に整備され、マナーを守らないような観光客が捨てていくようなゴミもボランティアが清掃活動をしている位に、草加市とARゲームメーカーが手を組んでいる状況だ。
当初は聖地巡礼だけでも大変なのに、ARゲーム環境を税金で整備する事には猛反対だったという。しかし、メーカー側もARゲームのシステムを議員に説明する等の対応で、何とか理解してもらおうと考える。
その結果が、月に最大十万人という観光客を生み出す観光事業にまで発展した。
【過去を振り返らず、現在だけを見ているような事が――】
【SNS炎上事件は過去の存在と言う事だろう】
【しかし、今でも炎上事件は起こっている】
【我々は悪質な便乗勢力に裁きを下すべきだ】
【炎上勢力は、自分の名前が目立てれば構わない。そうした人物の暴走が多いと聞く】
まるで、レッドダイバーの第四話を思わせるようなやり取りがSNS上で行われている。
本編のコピー&ペーストと言う訳ではなく、偶然と言う事かもしれないが。
「ここまで、ガーディアンが上手い具合に動くとは」
とあるまとめサイトをタブレット端末でチェックしている人物、それは右目に眼帯をした男性――ヤルダバオトである。
彼がサイトを見ていた場所は、何時ものサーバールームではなく、草加駅近くだ。そこにはリズムゲームプラスパルクールの端末も設置されていたのも分かる。
何故、そこまで足を運んでいるのかは、彼のみが知る所だろう。
「低レベルなまとめサイトはガーディアンにつぶさせるとして、次は――」
周囲を見回して何かを探すヤルダバオトだが、その目に留まったのはアンテナショップに設置されているセンターモニターだった。
そこに表示されているのは、リズムゲームプラスパルクールのライブ映像だが、場所はここから若干遠い。
ライブカメラの番号等から谷塚近辺と分かるが――ここから駆けつけるのは若干遠いか?
「あの勢力は泳がせておくか」
そこに映し出されていた人物は、最近になって有名になってきているゲーマー同盟というチームだった。
人物と言っても、重装備タイプのARアーマーを装着しており、その素顔はARメットを被っていて確認出来ない。
彼らはガーディアンとは違い、炎上勢力を無差別粛清するような事はしていないが、逆に言えばヤルダバオトにとって都合の悪い事もしていなかった。
そう言う関係もあって、あえて泳がせて真相を掴もうという事らしい。
一連の動画公開から一週間後の二月のある日、大きな動きが発生したのはこのタイミングだ。
ジャック・ザ・リッパーのアカウント凍結がSNS上で拡散し、レッドダイバーが現実に姿を見せたと拡散されたのも、このタイミングである。
【遂に動き出すのか?】
【ガーディアンが動いたという事か】
【ガーディアン以外も動いている可能性も高い】
【それだけ、ジャックの一件は大きかったというべきだろうな】
SNS上では動きが慌ただしいようにも見えるのだが、これがフェイクなのか真実なのかは分からない。
場所までは明記されていない為、他の勢力が情報のソースを求めて様々なサイトをサーチしているが、情報が入手できていないというべきか。
「ここまでくると、ガーディアンも名ばかりのSNS炎上勢力に見えなくもない」
赤髪のロングヘアに赤いカスタマイズ型ゴーグル、服装はぴっちりとしたARスーツを着用している。
それでも彼女が通報されないのは、草加市がコスプレイヤー用の歩行者天国等を解放している事による物だ。
『ユーウェイン、それは下手に言うべきではない。証拠もない以上、SNSのフェイクニュースに悪用されかねない』
赤髪の女性、ユーウェインに対して発言したのはARアーマーを着用した一人の人物である。
彼は常時アーマーを着用しているらしく、正体を彼女に見せる事はない。ARアーマー自体はフィールド内であれば、ゲーム以外でも着用は可能である。
これも一種のコスプレと言えなくもない仕様による物だ。どうやら、彼がヤルダバオトの見かけたプレイヤーらしい。
その形状はミリタリー系を連想させるが、ミリタリーと言う割にはカラーリングが西洋テイストなメタリックカラーに見えなくもないだろうか。
「フェイクニュースは、何処にでも拡散するものだ。それに、似たようなつぶやきまとめも存在している」
ユーウェインは既に似たようなニュースが拡散している事を彼に説明するのだが、何も答える気配がない。
「ガラハッド、他のメンバーが何も言わない以上、こちらも言及はしないが――」
ARアーマーの人物、ガラハッドに対してユーウェインは何かを発言しようとするも、敢えて言っても無駄と判断して止める。他のメンバーも合流する目途がなく、目的も今は白紙のままだ。
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