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草加駅より若干離れている一角、そこは線路の高架下に加えて若干の小規模ビルの密集エリアと言えるだろう。

そこで暴れまわっているのは、チートプレイヤーであるジャック・ザ・リッパーだった。

その外見は真田さなだシオンが目撃していた物と同じで、暗殺者風のマントにフードで素顔を隠すタイプ。

ARメットの装着が必須のゲームなので、素顔を晒すという行為自体あり得ない事だが――この人物もARメットをしていた。

ちなみに、チートツールはARメットにインストールする形式なのでメットを被らないといけない理由もあるようである。

他のプレイヤーはSFテイストなスーツにARメットと言う外見なので、ジャックだけが異様に目立つかもしれない。

(案の定というべきか――)

 赤いフード付き上着、それにバックパックが特徴の青年、暮無くれないヒビキはフィールドに到着して若干呆れるような表情でジャックを見ていた。

しかし、どのような目つきで見ていたのかどうかはフードを深く被っていて分からない。次の瞬間には、右腕に何かを装着し--それを歩道近くにある端末へ近づける。

《プレイヤーのエントリーを確認しました――》

 ジャックと別のプレイヤーのARメットにインフォメーションメッセージが表示された。

どうやら、あのプレイヤーも『リズムゲームプラスパルクール』に参戦するようである。

「こちらも本気を見せる時か――」

 その一言と共にヒビキの右腕に装着された特撮テイストなガジェットが輝きだす。

次の瞬間には、周囲も見覚えあるような姿になっていた。それを見て周囲のギャラリーが驚いたのは言うまでもない。

しかし、ジャックは何も感想を持たなかったのである。その姿を見ても何も知らないようなリアクションを取っていた。

「まさか?」

「信じられない」

「どういう事だ!?」

 周囲の動揺に関しても、ジャックは自分に対しての賛辞に聞こえていたのか、未だに驚く反応を見せていない。

他のプレイヤーや待機中のモニターで観戦していたプレイヤー等は、その姿を見て驚いているというのに――。

『無反応か――どうやら、貴様は自分がチートプレイヤーだと自覚していないようだな』

 その声を聞き、ようやくジャックはヒビキのいた場所に視線を合わせる。

そして、ジャックは自分が敵に回してしまった人物がどれだけの実力者なのかを思い知る事になった。

SNS上でもプロゲーマーとそん色ない実力を持つと言及され、更にはチートスレイヤーと言わんばかりにチートプレイヤーを狩っていく。

「お前が、あの噂の――」

 視線を合わせ、目の前に姿を見せている人物に対し、ジャックは嫌悪感を見せていた。

彼でもSNS上でチート狩りをしているガーディアンを初めとした勢力は知っている。

そして、ガーディアンとは無関係にチートプレイヤーを倒すプレイヤーがいる事も知っていた。

『私の名は、レッドダイバー。悪しきまとめサイトを全滅する為に――この世界にやってきたヒーロー!』

 SNSの動画サイトでも、いくつかのプレイ動画で目撃例がある。その上で、最大の脅威とまとめサイトでも書かれていたのが彼だった。

レッドダイバー、あの特撮番組に登場した主人公――それが時を越えて姿を見せたのである。



 草加市内の漫画喫茶、そこでもドリンクバーでリズムゲームプラスパルクールのライブ中継を観戦するものがいる。

競馬やボートレース場で目撃されるようなVIPルーム、それを連想させるような椅子とテーブルが並べられたスペース、それ自体が漫画喫茶である事を忘れさせる光景だろう。

全席禁煙、飲酒禁止の注意が書かれたスタンドが置かれた個別テーブル、そこには各自でノートパソコンを用意すればインターネット環境も使い放題だ。

それでドリンクバー込みの入場料五〇〇円は破格と言うべきなのか?

 しかし、これはあくまでもARゲームの観戦をする為の場所であり、一般的な場外馬券場等とは全く違うと言ってもいい。

「レッドダイバーが来たか」

 シオンが向かっていたのは、それがARゲーム観戦スペースとも言えるこの場所だった。

このエリアの近くには別のARゲームも設置されているが、今はレッドダイバーが出現した事で移動はしない。

椅子に座って、その後に用意したのはスマホである。スマホでもこの場所ではインターネット回線が使い放題――それで入場料五〇〇円である。

(しかし、本当にSNS上の噂は本当なのか――確かめる必要がありそうね)

 シオンはドリンクバーでメロンソーダを持ってきており、タンブラーで飲んでいた。

さすがに場所的な事もあって飲み物をこぼすと一大事な為か、一般的なガラスの容器ではなく、特殊加工されたアルミのタンブラーが使われている。

(果たして、彼は本当にSNS上で言われているレッドダイバーなのか)

 シオンは思う所がありつつも、設置されている大型モニターに映し出されていたライブ映像を見ていた。

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