最終話 良いところは取られ

倒れた綾に近づき

「おい、大丈夫か!」

と声をかけるが反応が無い。

ただ、彼女の体を見ても血が出ている様子はなかった。

頭を見るとヘルメットの硬い部分に当たった跡があった。

それに気づいた彼はホッとしていた。

彼女を安全な場所に寝かせ、彼女を守るように男たちの相手をした。

「チッ、男1人で手こずるな!」

とリーダーだと思われる男の声が聞こえた。

それと同時に

「警察だ!全員抵抗をせず、武器を地面に置け!」

と倉庫内に響く声で言った。

それは麻薬取締を行っている捜査4課の尾上だった。

いつの間にか彼らを囲むように刑事たちが配置されていた。

その後、2人を襲っていた男たちは逮捕された。

「今回の情報はアタリだったな」

と言って尾上が彼に言った。

「今回のは情報源がちゃんとしてたが、オノちゃんに言ったらまた偽物を掴ませやがってー!って言われたらいけないと思って」

「まあ、お前の助手にお礼言っておけよ。こっちに取引の情報をお前回さずに言ったから彼女が取引場所と時間を教えてくれたんだからな」

そう言われて、彼女のことに気づいた。

「あの彼女、そこで倒れてるから病院に連れてってくれ」

と言うと

「ああ、彼女ならお前の後ろに立ってるぞ」

と言われて、後ろをむこうと瞬間思いっきり頭を殴られた。

「もう勝手に出ていくのは良いけど、いくら捜査4課に言いにくくても寺下刑事くらいにでも連絡くらいはして出ていってくださいよ!」

「ああ…すまん。ってか、頭は大丈夫なのか?」

「これくらい高校時代に鉄パイプで頭を殴られるよりかは痛くないですよ」

とさらっととんでもないことを言った。

その後、彼らが警察署を出ていった後、寺下から尾上にSDカードを渡して裏を取っていたことを知った。

その情報は、捜査4課が必死で探していた取引名簿や売上帳などのデータだった。

中身のデータの信憑性が確認されたと同時くらいに彼女からSDカードの受け渡しが行われると知って総動員したのだった。

大物捕物が終わり、2人も手当を受けた。

「本当に良いのか?病院で一応検査してもらったほうが……」

「ちょっと衝撃で気を失っただけだから」

2人は1度事務所に戻ってソファーに座った瞬間、緊張が切れたかのようにぐったりとした。

数日後、事務所に珍しい訪問者が来た。

「江崎居るかー!」

とドアを開けたのは、寺下だった。

「こんな朝から元気ですね」

「我妻さん、怪我は大丈夫ですか?」

「ええ、刑事さんも知っているでしょ?私の過去を」

と微笑みながら言った。

江崎と同様彼女も問題児で寺下にお世話になったことが彼よりも少ないが何度かあった。

「で、江崎は?」

「ああ、彼ならソファーで寝てますよ」

それを聞いてソファーを覗いてみると気持ちよさそうに寝ている彼を見つけた。

そして、彼の腹の上に全体重をかけるかのように座った。

「重っ!」

痛みと同時に目が覚めた彼は、寺下が来ていることを知った。

「昼間だというのにお前は昼寝か」

「いいでしょ、まともに仕事なんか来るわけないから」

という彼の目の前に1つの封筒が置かれた。

「これはどういう意味ですか?」

「一応俺からのお礼だよ、まあお前らの情報で4課は大手柄だったしな」

「でも、本当はこんなの渡したらいけないんじゃないですか?」

お茶を出していた彼女が言うと

「警察からは駄目だが、俺個人からのお礼だからな」

と聞くと彼はその封筒を取り中身を確認してかなり喜んでいた。

「まあ、今後もなんかあるだろうが問題だけは勘弁してくれよ」

とお茶を飲んで出ていった。

そして、2人は猫1匹探すことがこんな大きな事件になるのはもうゴメンだと思った。

それからは大きな仕事も無くダラダラとした毎日に戻った。

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探偵事務所という名の何でも屋~依頼はろくでもない~ 如月朱鳥 @kisaragiasuka

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