第7話 そうも上手くいくわけなく

予定より早くついた弘樹は待ち合わせだった倉庫には行かず、何かを見て回っていた。

「ここからだったら2番倉庫に一直線か」

倉庫街だと少し場所が離れると入り組んだ道になっている。

彼はもしもの時のために逃げ道を探していたのだった。

そして、時計を見て2番倉庫に向かった。

2番倉庫のドアを開けて中に入ると1人の男が立っていた。

「言われたものは持ってきたか」

と唐突に言われた。

「これでいいんですよね?」

そう言いながら男に渡した。

その瞬間、男は彼のポケットや服装を見て

「防弾チョッキとポケットに入れているスタンガンをここに置け」

言われたとおり防弾チョッキを脱ぎ、ポケットに護身用入れていたスタンガンを地面に置いた。

彼が脱いだりしている間に、もう1人男が来てSDカードを持っていった。

「一応中身の確認だけはさせてもらう」

「渡すだけって聞いたんですが……」

「見てないと言ってもお前が本当に見てないかなんて信用ならないからな」

その瞬間、彼は目をそらした。

数時間前に見たし、警察に渡しているし、コピー品を渡しているからそわそわしてしまう。

SDカードを持っていった男が戻ってきて、耳打ちをすると男が

「本物のSDカードはどこにある!」

と大声で言った。

「あれっ?本物じゃなかったですか?それが出てきたんだけどな~」

ととぼけたように言うと複数の男に囲まれた。

しかも、その男たちは鉄パイプやメリケンサックをしていた。

「嘘をつくな!あれは、組の事務所で取られたSDカードだ!

 確認したが、隠しファイルが表示されなかった」

「本当に知らないって!」

「知らないわけ無いだろ、お前らそいつを捕まえて吐かせろ」

そう言うと複数の男が彼を襲ってきた。

振りかざされた鉄パイプをスレスレでかわし、相手の顎を掌底打ちして気絶させた。

1人を倒したとしても次から次へと襲いかかられていた。

かわしては1人ずつ倒してはいたがキリがない。

「どんだけ集めだんだよ、これだったら1人で来るんじゃなかったよ」

そんなことを言っていると彼の背中を狙って何かがかすった。

彼は背中をそっと見ると服が切れた跡があった。

そして、後ろには真剣を持った男が居た。

「おいおい、殺す気か?」

と言いながら、真剣を避けながら攻撃のタイミングを考えていた。

だが、別の相手もしながらだと全くタイミングが掴めない。

というより、攻撃をさせてくれなかった。

そんなことをしていると外からバイクの高いエンジン音が倉庫に向かってきた。

大きな搬入用のシャッターを壊して、1台のバイクが入ってきたのだった。

「江崎さん、ごめんなさい。バイク少し傷いっちゃったかも」

と言いながら、バイクから降りたのは助手の綾だった。

「いや……良いけど、来るなって言ったろ!」

「やることはちゃんとやってきているから」

と2人のやり取りを少し見ていた男たちは

「女だろうが、あいつの味方なら容赦しねぇぞ!」

と言って襲ってきた。

「はぁ、江崎さんまた失敗したんですか~」

ため息を付きながら殴りにかかってきた男に向かって思いっきり足を振り上げ踵落としをきめた。

そして、彼女も参戦した。

2人で相手するにも多く、徐々にそこらの喧嘩をしているチンピラとは違った人たちが出てきていた。

「本当にこれ大丈夫なのか?」

と不安になった彼は彼女に聞いた。

「大丈夫ですよ、ただ遅いだけで」

と笑いながら、話をしているとカチャと銃の安全装置を外すような音がした。

その後、すぐにバンッと乾いた音がしてバタンと誰かが倒れた。

彼が見るとそこには彼女が倒れていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る