第6話 相手の用件は……

事務所の鍵を開け、2人が一息をつくと同時に電話がなった。

「はい、こちら江崎探偵事務所です」

取ったのは綾だった。

『そこに猫は居るか?』

と変声機を使っているような機械音が聞こえた。

そっと彼女は彼に目で訴えた。

彼は近くの紙に

(用件を聞いて)

と書いて彼女に見せた。

頷いてそのまま話を続けた。

それと同時に彼にも聞こえるようにスピーカーにした。

「猫はすでに依頼主に渡しています。」

『じゃあ、猫が糞とかしていないか?』

と言われ、彼女はどうしようか迷ったがそのまま答えた。

「事務所内でしたので、そのままゴミ箱に捨てましたよ」

『それを捨てる時に違和感はなかった?』

「SDカードが入ってましたけど?」

『それは今手元にあるよな?』

と言われて戸惑った。

2人で警察に行き渡してしまっていた。

無いといえばどうなるのかなんとなくだが理解できていた。

そして、彼が提案したのがあると答えることだった。

「手元にケースに入ってあります」

『さっき出かけていたみたいだが、届けに行ったとかじゃないのか?』

「それは以前の資料を届けて、忘れ物を取りに行っただけです」

ととっさに考えた嘘を言った。

バレる可能性が高いと思っていたが、相手からは予想外の答えが来た。

『そのSDカードの中身は見てないよな?』

「見てないんですが、中身って何なんですか?」

『いや、お前らが知らなくていい』

と返答が来たあと、電話の向こう側で何か話し合っているような声がした。

その間に彼女は彼にどうするっていうような相談を筆談でしていた。

(もし持って来いって言われても大丈夫だろ?)

(一応データはパソコンに落としているので大丈夫です)

2人の相談が終わったくらいに電話から声がした。

『じゃあ、そこの事務所に男が居るだろ?』

「ええ、1名バカが」

『そいつに港町の2番倉庫に1人で1時間後に持ってこさせろ』

2人の予想通りの答えが来た。

「2人は駄目ですか?」

『2人は駄目だ、あと警察に通報でもしてみろ。事務所がどうなるかわかるだろ?』

と脅しをかけてきた。

それと同時に電話は切れていた。

彼は近くにある探偵事務所には置いてないであろ防弾チョッキを着て小型のスタンガンをポケットに入れた。

その間に彼女はSDカードのダミーを作っていた。

猫から出てきたSDカードと同じ型のものでバレないようにしていた。

そして、出来上がったSDカードを彼に不安そうな顔をして渡した。

「まあ、大丈夫だって。まともに帰ってこれるとは思わないが……」

といつものように明るく出ていった。

車に乗って20分ほど走ったところの倉庫街。

駐車場があるわけではないので、倉庫から少し離れた場所に車を止めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る