第5話 話は聞くが対応は

弘樹と綾は警察署に到着した。

ただ、彼らが警察署に入っていくのを誰かにずっと見られている感じがしていた。

そのまま、彼はある課へ直行した。

「寺下刑事居ますか?」

とカウンター近くに居た警察官に声をかけた。

そのまま、奥に行きイライラしながらパソコンを見ていた男性に声をかけていた。

嫌そうに彼らを見て、近づいてきた。

「何だ、江崎。お前また俺に怒られるようなことをしたか」

「怒られるようなことってやったことあったっけ~」

ととぼけたように答えた。

「散々学生時代に俺に怒られただろ、今でも時々問題起こして俺が出動する羽目になるしさ」

笑いながら、話を聞いてないふりをしていた。

「まあ、ここで話してたら邪魔だから」

と言って近くの刑事に

「第1取調室空いてるか?」

と聞いて、空いていると分かり2人を第1取調室に案内した。

そこはドラマでよく見る調書を取る事務机が隅に置かれ、真ん中には机とパイプ椅子が2脚置かれていた。

寺下は取調室に入る前にペットボトルを2本持って入った。

扉を締め、壁に立てかけていたパイプ椅子1脚を出した。

窓側に寺下は座りその向かいに弘樹、並ぶように綾が座った。

そして、寺下はペットボトルの飲み物を彼女だけに渡した。

「えっ、俺の分は?」

「1階の自販機ででも買ってこい」

「それはひどい」

と言いながらしょぼくれるともう1本のペットボトルを彼に渡した。

「俺は飲み物飲まない分タバコを吸わせてもらうよ」

ポケットからタバコを出して、火を付けて吸い始めた。

それと同時に彼がジェケットのポケットに入れていたSDカードを取り出した。

「で、それを俺にどうしろと?」

なんのSDカードかも聞かずに言ってきた。

「できれば警察でどうにかしてもらいたいな~と思いまして」

「お前のことだ、中身はどうせ無修正の違法動画だろう」

と女性がいる前でアダルトに近い話を出した。

「一応そんなのじゃないんですが……」

そっと彼女が2人の話に口を挟んだ。

「麻薬の取引関係のリストがこの中にぎっちりと入っている」

「う~ん、麻薬ね。俺じゃなく刑事5課に言ってくれないか?」

彼はそっと視線をそらして

「いや……刑事5課は話聞いてくれないだろう……過去に偽情報を渡してしまったし……」

弘樹は過去に1度だけ、偶然手に入れた情報を提供して捜査を混乱させた過去があった。

その後も情報が手に入って持っていくと門前払いをされている。

「物証はあるんだから、聞き入れてくれるんじゃねぇか?」

「代わりに寺下さんお願いします!」

と言ってSDカードを渡して逃げようとした。

「お前、人任せにするなー!」

そう言っている間に2人は出ていっていた。

彼の手元にはSDカードだけが残された。

「一応は話をしておくか~」

とそのまま刑事5課に向かった。

その頃、出ていった2人は車に乗って事務所に戻っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る