第5話 きkdfjkl;:・
「清水さん、ゴメンね」
泣きじゃくる彼女の髪を再び撫でる。
「この世界は、僕の為だったんだね」
死んでしまった僕を生きながらえさせるために作った架空の学校。
「清水さんは物語を作るのが好きだったもんね、皆から冷やかされるようになって見せてもらうことは少なくなったけど、僕は清水さんの作った話、大好きだよ?」
話を作ることが得意だった清水さんなら、こんな世界作るのなんて容易だもんね。そう思った僕は笑う。
「そして、君のことも、大好きだ」
「山田君が謝ることないよ……だって全部私が悪いの。死のうと思ったのに山田君が変わりに飛び降りて動かなくなって。だから、私はあの魔法使いに願ったの。でも、それは……」
僕の手を取って彼女は自らの頬に寄せる。
「山田君をここに閉じ込めることになってしまった。ごめんなさい。本当にごめんなさい。私なんかのために山田君は」
嗚咽を漏らして彼女は必死に謝る。
「僕は好きだった貴方を救ったんだ。それだけで十分だったんだよ。でも、また清水さんと一緒にこの学園生活を送れて幸せでした。でも、貴方は僕の分まで幸せになって欲しいんだ。例え苦しいことが多くても僕が見守っているから、守ってあげることはもう出来ないけど、傍にいるから。幸せになって欲しい」
「嫌だよ。山田君が居なくなるなんて嫌だ」
「僕は消えてしまうかもしれないけど、大丈夫だから」
必死に僕をここへ繋ぎとめようとする彼女を必死に説得する。
僕だってここで生涯を終えてしまうのは正直怖い。もっと生きたかった。でも、彼女がその先に人生を歩めるために、僕は決意したんだ。
「さぁ、一緒に元の世界へと帰ろう?」
「うん……」
やっと彼女は納得してくれた。
「やっと決断出来たか?」
いきなり背後から魔法使いがやって来た。
「やっと俺を入れないようにしていた結界みたいなのが解けたからやって来たというのに、青春していますねぇ?」
ニヤニヤと魔法使いは僕達を見た。
「まぁその話は置いておいて、やっと世界を終わらせる決心が着いたわけだな」
「……えぇ」
彼女の決意を聞いた後、魔法使いは僕を見る。
「君は正真正銘世界から消えてしまうわけなんだが、本当にそれでいいのか?」
「いいんです。僕のこの世界の役割もやっと理解できたんで、それで満足です」
「そうか、君の正体を思い出せたんだな。よろしい。では、この幻想を終わりにしよう。と、その前に」
いよいよかと身構えていた僕達に魔法使いはタイムをかける。
「もう、最後はなんなんですか?」
「ちょっと気が変わってね。君たちに俺からの贈り物だ」
そう言って魔法使いは指を一回鳴らす。特に変わったようなことはないみたいだ。
「さぁ。俺が何をしたかは後々分かるとして、さぁフィナーレだ」
そういうと魔法使いは教室の床を右足でドンを踏みつけた。
すると、教室に亀裂が入って崩落する。
僕と清水さんはその崩落に飲み込まれるように落下していく。
「達者でなぁ!」
ニコニコと笑いながら魔法使いは浮いたままで落ちていく僕らを見送る。
そんな魔法使いを見たあと、僕らは二人見つめあって、笑う。
「さぁ、帰ろう清水さん」
「えぇ。山田君」
笑いあう二人はこうして黒い闇へと落ちていった。
***
「無事帰ったようだな」
崩落が続く世界を魔法使いは一人ただただ眺めていた。
「果たして、俺にしては随分と粋な贈り物をしたと君は褒めてくれるだろうか」
そういう彼の顔は清々しいものだった。
魔法使いは伸びを一つする。
「さぁ、次の世界で君と再会できるように願うとしようか。俺は君を見つけるまでこの魔法使いの皮を被ったままでいようか」
魔法使いはその言葉を残して何処かへと消えてしまった。
こうして世界は終わりを迎えた。
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