第1話 その名はアレン

 ――大迷宮都市『ラビュリントス』。


 そこは、周りをぐるりと囲む峻厳しゅんげんなる山々に手を加えて築かれた古代の城壁をそのまま今に残し、その名の由来である世界最大の迷宮ダンジョンを地下に有する特別自治都市。


 そんなラビュリントスの城壁には、四つの関所のような大門がある。


 南東と北西は『入口』、北東と南西は『出口』と決められており、入口は、昼夜を問わず開け放たれていていつ何時なんどきでも通る事ができ、身分証の提示や通行料を求められる事も、手荷物や貨物の検査すらなく、誰もが自由に都市へ入る事ができる。


 南東の大門へ続く人々の流れの中で、一番多く見受けられるのはやはり人間族ヒューマンだが、それだけではなく、妖精族エルフがいて、地人族ドワーフがいて、獣人族ベスティア翼人族アーラ爬虫類人リザードマン鬼人族ホーンディアン……様々な種族の姿があり、二種族以上の特徴を有する人々の姿もある。


 そんな人の流れに乗って進み、いたる所に見受けられる壮麗な彫刻を眺めながら巨大な門を通過すると、そこには斜面からせり出した展望台が。大門は山間にあるが、それでも都市より標高が高いため、そこからラビュリントスを一望する事ができ――


「なんじゃこりゃ……」


 人の流れからはずれ、広い展望台の片隅で足を止めて、その少年はかぶっていた風雨除けのマントのフードを背に払い、他に類を見ない巨大都市の景観に思わず驚嘆の声を漏らした。


 何と言ってもまず目に入るのは、ここに来るまでも見えていた空に浮いている街。


 底面が広くて、高さが低い、六芒星の角錐を逆さまにした土台の上に一つの市街があり、そんなものが何の支えもなく雲と同じ高さに浮かんでいる。


 しかも、一つではない。


 中央に一つ、その周りにも等間隔に大きく円を描くように六つ。計七つもそんなものが上空に浮かんでいる。それなのに、地上の巨大都市ラビュリントスにはそれらの影が落ちていない。地上と浮遊市街の間を行き来している小型飛空艇ゴンドラの影はあるのに。


 そして、地上のほうもまた普通ではない。


 都市の中心へ近付くにつれて、金属のようにも大理石のようにも見える何かでできた天をくような高層建築物が増えて行き、そんな中にぽっかりと見る者にダンジョンの入口があるのだろうと想像させる開けた空間がある。その一方で、円形闘技場や劇場、大聖堂のような歴史を感じさせる建物も存在感を放っており、整備された河川と道路が通い、田畑ではない緑が幾つも街中に見受けられ…………自然物と人工物、それに過去、現在、未来が融合したような独特の景観を形作っている。


「総合科学としての錬金術が発達した未来の世界の都市はきっとあんな感じだろう、とは聞いてたけど……」


 他に形容する言葉が見付からず、ただただ唖然とする。


 その少年の名は『アレン』。


 もうすぐ16歳。世間では15歳から成人とみなされるが、まだまだ子供っぽさが抜けない黒髪の少年で、瞳の色は一見すると銀だが、よくよく見れば薄っすらと不思議な虹色の光沢をびている。中肉中背で、身に着けている長袖のシャツとズボンはありふれたものだが、ブーツは自分の足に合わせた特注品。防具は軽装で、なめした革の表面を張り合わせた薄い金属のプレートで補強した篭手、すね当て、胸と背中を保護する胴鎧。腰の後ろにはウエストポーチ型の魔法鞄ガレージバッグ。そして、柄頭つかがしらから小型のつばさやこじりまで一体形成のように見える刀を左手でたずさえている。


「――ねぇ、君」


 ここで足を止めてからずっと感じていた視線、近付いてくる気配、自分を気遣うように掛けられた声にアレンが振り返ると、そこには神秘的な雰囲気を漂わせた見目麗しい女性の姿が。


 年の頃は10代後半。肩に軽くかかる程度の長さに整えられた髪は紫陽花のような薄紫色で、瞳は上質な紫水晶アメシストのように澄んだ紫。背はアレンよりやや低く、肌は白磁のように白く滑らかで、ミニ丈のワンピースにオーバーニーソックスを合わせ、ロングブーツを履き、袖口が広がったローブをまとっている。


「…………。俺に何か用ですか?」


 振り返って目が合うと、声をかけてきた女性は軽く目をみはって呆けてしまい、少し待ってから怪訝けげんそうにくと、女性は、はっ、と我に返って一つ咳払い。それから、


「君、ラビュリントスに来たのは初めて?」


 気を取り直して何事もなかったかのようにそう訊いてきた。


「はい」

「ここに来たのは、冒険者になってダンジョンに挑戦するため?」

「はい」


 敵意や悪意の類は感じなかったため、特に何も考えずかれた事に対して素直に答える。すると、その女性は、そう、と頷き、それから自分の左手の甲にある六芒星の紋章、師匠や老師の左手にもあった冒険者の証を見せながらにっこりと微笑んで、


「私は、休日を利用して、将来肩を並べる事になるかもしれない君のような新人を、クソッ垂れな新人狩りから護るボランティアをしている者です」


 突然そんな事を言い出した。


 自分のようなボランティアが他にもいると言い、促されてアレンが展望台を見回すと、確かに数名、この場にいながら景観に背を向けて大門から流れてくる人々のほうを見ている者達がいる。


「もし君が望むのなら、これからラビュリントスを案内しながら冒険者として最低限必要な事を教えようと思うんだけど、どうする?」


 どうやらここには、自分のようにまだ右も左も分からない新参者を食い物にする盗賊のようなやからがいるらしい。今目の前にいる親切そうに声をかけてきたこの女性がそうだという可能性もあるが……


「…………。よろしくお願いします」


 アレンは一度、巨大な都市に目を向けて思案してから、その時はその時、当てもなく目的の場所を探して彷徨さまようよりはましだろうと考えて覚悟を決め、礼儀正しく頭を下げた。




 好印象を持ってもらえたらしく笑顔で引き受けてくれた女性は、まず不躾ぶしつけにものをたずねた事をびてから、『ラシャン』と名乗った。それに対してアレンが名乗り返すと、


「ねぇ、アレン君、展望台ここはもういい?」

「はい」

「じゃあ、話は移動しながらしましょう」


 アレンは、きびすを返して颯爽さっそうと歩を進めるラシャンについて行く。


「君が向かおうとしていたのは、冒険者養成学校? それとも冒険者ギルド?」


 まずは今後の活動の拠点となる家を確認しておきたかったのだが、その二択なら、


「ギルドです」


 『ガッコウ』というのが何か知らないアレンがそう答えると、じゃあこっちね、と分かれ道でも迷いのない足取りで進むラシャン。


 縦看板を見るに、この先には『南東門駅』があるらしい。


 百聞は一見にかず。訊く前にまず見てみようと考え、黙ってついて行くと、出入口の上に『南東門駅』と大きく書かれた看板が掛けられている建物が見えてきた。


 南東門はつい先ほど潜り抜けた大門。なら、この建物が南東門にある『駅』なのだろうと見当を付けながらついて行くと、左手に紋章がある者は、それを兵士のような服装の男性に見せてそのまま通過して行くが、ない人々は、出入口の脇にある窓口で『乗車券』とやらを購入しているようだった。


「ついてきて」


 自分には紋章がない。故に、乗車券を購入しなければならないのだろうと考えていたアレンだったが、紋章を提示したラシャンに呼ばれて従うと、彼女と一緒にそのまま通してもらえた。


「この乗り物は『鉄道列車トレイン』って言うの。他の場所にあるって話は聞いた事がないから、乗るのは初めてなんじゃない?」


 アレンは物珍しさに言葉もなくコクコク頷き、ラシャンに促されて幾つも連なっている細長い箱馬車のようなもの、その後ろのほうの客車に乗り込んだ。


 トレインの中は、中央に通路があり、左右に向かい合わせで二人掛けの長椅子が幾つも並び、左右の壁には大きな窓が並んでいて外の様子がよく見え、その全てに高価なはずのガラスが、しかも、透明度の高い大きなガラスの一枚板がもちいられている。


 思わず足を止めてキョロキョロ見回しているとラシャンに呼ばれ、アレンはうながされて彼女の向かい側の席に腰かけた。


「ねぇ、アレン君。もしよかったらでいいんだけど、教えてもらえないかな? 君がラビュリントスの大迷宮に挑む、その理由を」


 もしよかったら……、などと言いつつその目は、是非ッ!! と言っている。


 外の景色が気になるアレンは、チラチラ窓のほうを見ながらどうしようか考え、まぁいいか、と答える事にした。それから、束の間どう話したものかと思案して……


「えぇ~と、その……趣味と実益、あと友達探しのためです」

「趣味と実益と友達探し?」


 予想外の答えだったのか、きょとんとするラシャン。


「変ですか?」

「いいえ。ただ、珍しいかな? 言い方はどうあれ、結局のところ、夢を叶えるため、とか、ロマンを求めて、とか、そんな現実を見ていない感じの人のほうが多いから。一攫千金とか、名誉栄達とか、完全攻略して歴史に名をのこす、とか」


 そのどれにも興味がないアレンは、そういうものなのかと首を傾げる事しかできない。


「あっ、でも、『友達探し』っていうのは、やっぱりあれ? 一人では不可能でも仲間とならどんな困難も乗り越えられる、っていう」

「ん~……、少し違うと思います。――おっ?」


 出発の合図らしい鐘の音が響き渡り、やがてトレインが動き出した。


 アレンとしてはやはり車窓から望める景色のほうが気になるのだが、ラシャンに話の先を促されて渋々向き合い、


「えぇ~と……、俺には師匠と老師、二人の先生がいるんです。師匠と老師も昔は冒険者をしていた頃があったらしくて、肩を並べ、背中を預け合って戦った――そういう仲間達の存在が自分を高めてくれた、という話をよく聞かせてもらいました。だから俺も、師匠と老師のように、お互いを高め合いながら長く付き合えて、引退した後ものんびり酒をみ交わしながら昔話をするような、そういう友達がほしいなぁ、と思って……」


 どこからが変でどこまでが変じゃないのか、その基準が分からないアレンがラシャンの反応をうかがうと、


「その理由、すごく素敵だと思う」


 瞳をキラキラさせて何やら感動しているようなので、変ではなかったようだ。


 アレンが内心で、ほっ、としていると、ラシャンが残りの理由――趣味と実益についてたずねてきたので、


「俺は、趣味と言えるものが、技を磨く事と、おのれの能力を高める事ぐらいしかないんです。それで、戦いを求めている訳ではないんですけど、上達するには会得した技を実践して、経験を積む必要があって――」

「――分かるッ!」


 唐突にラシャンが思いっきり身を乗り出してそう言い放ち、顔のあまりの近さに驚いたアレンは反射的に仰け反るように身を引き――ゴツッ、と背凭せもたれに思いっきり後頭部を打ち付けた。


 歯を食いしばって痛みを堪えプルプルしているアレンをよそに、背凭れに寄りかからず、スッ、と背筋を伸ばした姿勢に戻ったラシャンは、程よく豊かな胸を強調するかのように腕を組んで、同感だと言わんばかりにうんうんと何度も頷き、


「私がダンジョンに潜るのも、身に付けた力を思う存分に振るうためなの。戦争で兵器扱いされて人同士殺し合うなんて絶対にイヤ。かといってこの大陸の地上には倒すべきモンスターがいない。別の大陸へ渡ってわざわざ探し回るまでもなく、ウジャウジャいるモンスターが向こうから寄ってきて、それを倒して生計を立てられる仕組みが既にできているとなれば、もうダンジョンに潜るしかないじゃない!」


 憤慨するように言うラシャン。それで何かのたがが外れてしまったのか、愚痴、自慢、愚痴、自慢…………と、中央区駅に到着するまでラシャンの口は延々と動き続けて止まる事はなかった。




「さぁ、行きましょう。冒険者ギルドはこっちよ」


 目的の駅に到着した事に気付いて慌ててトレインから駆け降りるまで一方的に話し続けていたラシャンは、ばつが悪いのか、ほんのり頬を朱に染めて、こほんっ、と咳払いすると、気を取り直して何事もなかったかのように案内を続ける。


 少し前に見たような光景だが、アレンは気にしない事にして後に続いた。


 別に何も、ラシャンが早口で怒涛どとうのようにしゃべり倒した訳ではない。アレンが次々に移り変わる話題について行けず、軌道修正するどころか何を言えば良いのか分からず聞き役に徹していた結果だ。


 それに、時間を無駄にしたとは思わない。実にいろいろな事を知る事ができた。


 例えば――


 現在、ダンジョンの最高到達記録は地下35階だという事。


 その記録を打ち立てたのが、ラシャンが属するクラン《暗闇に差す光輝》だという事。


 『クラン』というのは、最大6名のパーティが複数集まってできた集団らしいという事。


 冒険者達の間で名を知られるようになると、いつの間にか勝手に〝二つ名〟を付けられるという事。


 『転送屋』という到達済みならどの階層へでも転位魔法で送り届ける事を生業なりわいとする者達がいるという事。


 さきへ進むための階段の前には必ず『ボス部屋』とやらがあり、扉を開けるとそこに『階層の主ボス』が出現するという事。


 彼女は、というかおそらく冒険者達は、宝箱の事を『ガチャ』と呼んでいるらしい事。


 ――などなど。


 他にもまだあるが、とにかく話の中に出てきた彼女やその仲間達がよく利用するらしい武器屋、防具屋、薬屋だと思われる店の名前は全て覚えておいた。


 それと、彼女が属するクランは『遠征』とやらをひかえているため、今は新人を募集していないそうなのだが、下へ進むごとに巨大かつ広大になっていくダンジョンを探索し、攻略するためには必ず募集する事になる。それ故に、声をかけるかもしれないから考えておいてね、と言われた事も一応覚えておく事にする。


「ここは中央区。冒険者が多いのはダンジョンの入口があるからよ」


 中央区駅から出た所には円形地帯ロータリーがあり、三方向へ太い通りが伸びている。この辺りの建物は、アレンの感覚で言うと、どれも城か砦かというような高層の建築物ビルがひしめき合っており、田舎者丸出しな感じでキョロキョロしていると、ラシャンが面白がるように声をかけてきた。


 他に類を見ない街並み。そこを往く様々な種族の人々。建物の一階はたいてい店舗になっていて、商品がショーケースの中で展示されていたり、店先に並べられていたりしている。そして、やはり冒険者が装備している武器や防具も気になって――


「ねぇ、アレン君。今すれ違った鎧の中身、どんな人だと思う?」


 前を進んでいたラシャンが歩く速度を緩めて隣に並び、そんな事を訊いてきた。


 それは、かぶとの飾りまで入れれば2メートルの半ばを超える、関節部まで可動式の装甲で覆われた青味がかった銀色を基調とする重厚な全身甲冑を装備し、長柄の戦斧ハルバートを背負っていた人物の事だろう。普通に考えれば……


「筋骨隆々な大男、ですか?」


 だが、わざわざ訊いてきたという事は違うんだろうなぁ、と思いつつ答えると案の定。


「小柄で華奢きゃしゃな【魔術士】の女の子よ」

「えッ!?」


 思わず振り返って見るアレン。いやいやあり得ないだろうと思っていると、


「あれは〔超魔導重甲冑カタフラクト〕。機動隊の〔搭乗型ゴーレムブリガンダイン〕のオリジナルで、これまでにダンジョンで6機しか発見されていない激レア装備。別名『動く儀式場』。全て魔法金属の合金で造られていて、装着者の膂力りょりょくを数十倍に増幅し、破壊不可能と評されるほどの防御力を誇る上、行使する魔法の効果まで増幅する機能が備わっているそうよ」

「ダンジョンで? そんなものまで……」

「金銀財宝や、絶大な攻撃力を秘めた魔剣、担い手に恩恵を授ける聖剣なんかは有名だけど、あれみたいに、古代文明の技術力の高さを思い知らされる発見も結構あるの」


 そして、剣について触れたからか、今までずっと気になっていたようだが、たった今気付いたような感じで、


「そう言えば、二人の先生も元冒険者だって言ってたけど、アレン君のその剣も、ひょっとしてダンジョンで発見された魔剣や聖剣のたぐい?」

「え? そう……なのかな?」


 師匠がこれをどこで手に入れたのか知らないし、魔剣や聖剣と呼んで良い代物なのかも分からない。ただ、特別なものである事だけは間違いない。


「知らないの?」

「はい。今まで考えた事もありませんでした。ご想像の通り、これは、世間的に成人と認められる15歳まで修行に専念した褒美ほうびだ、と師匠からもらったものなので」


 使い続ける理由は、それだけで十分。


「絶大な攻撃力を秘めている、とか、恩恵を授けてくれる、なんて事はないです。躰の一部のように馴染んですごく使い勝手が良いんですけど」


 ラシャンは、そう……、とどこか釈然としていない様子だったが、気持ちを切り替えて話題も変えてきた。


「アレン君の武器はその剣だけ?」

「はい。〝これ〟だけです」


 左手で携えている〝得物これ〟――〔無貌の器バルトアンデルス〕を軽く持ち上げて見せるアレン。


「昔はどうか知らないけど、今は前衛、後衛にかかわらず近距離用ショート・レンジ遠距離用ロング・レンジの攻撃手段を用意しておくのが常識よ」

「分かりました」


 その常識は、今も昔も変わらないらしい。師匠は『剣聖』とうたわれていたそうだが、刀しか扱えない訳ではなく武芸百般。遠距離攻撃の手段なら、刀の扱い程ではないが、弓や投擲剣ダガーもしっかり仕込んでもらったので問題ないはず。


 それから話は、ギルドが関知しない、冒険者としてではなく一個人としてこの都市で生活していく上での常識や注意点になり、アレンは後について歩きながら集中して耳を傾け……


「ここよ」


 そう言ってラシャンが足を止めたのは、大きな建物の前。だが、その大きく開け放たれている両開きの扉の脇には、宿屋兼酒場の看板が掛けられている。


「ここが冒険者ギルド?」

「冒険者ギルドがあるのは上」


 そう言って、都市中央上空の浮遊市街を指差し、


「ここは冒険者ギルド直営の酒場兼宿屋で、ギルドへの転移門ゲートがあるの」


 アレンもラシャンに続いて店内へ足を踏み入れた。


 入ってすぐの場所は宿屋のロビー。手続きをするカウンター、二階への階段、そして、そうは見えない転移門がある。奥の両開きの扉の向こうが食堂兼酒場。安酒と料理を飲み食いするための丸テーブルと六つの椅子のセットが整然と並び、その向こうには高級酒を出すバーカウンターがある。


「私の案内はここまで。その向こうはもうギルドで、あっちに受付が見えるでしょう?」


 それは『門』というより、部屋と通路の連絡口にしか見えないが、確かにその向こうは床の色が変わっていて天井の高さも違い、漂う雰囲気も異なっている。


 アレンは感謝の言葉をべ、何かお礼をと考えたが、ボランティアだからいいと断られた。


「いい担当さんにめぐり合える事を祈っているわ」


 ラシャンはそう言ってアレンの背中を押し、アレンはもう一度感謝の言葉と共に頭を下げてから、そうは見えない転移門を潜った。

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