第4話 サッカーをやる意味
「タイムスリップかぁ~。出来たら凄いだろうな!」
高橋は屈託の無い笑顔を浮かべる。いや、違うんだよ。実際に起こってるんだ。
「もしさ…俺が、未来からタイムスリップして来たって言ったら…どう思う?」
「え?マジで!?スゲェじゃん!だったらさ!俺は?俺は未来で何してんだ!?」
「ええ!?いやぁ、でんき屋かな?」
「えぇ~、マジかぁ~。やっぱりサッカー選手にはなれないんだなぁ~」
…なんか、拍子抜けするほど、高橋はタイムスリップの話しにすんなり乗ってきた。
信じてないからかな?でも、信じた上で乗って来てる雰囲気もあるし…。
「お前さ、自分の未来を知ってたら…どうする?」
「ん?そうだなぁ…。でもさ、それってスゲェ事だよな?別に俺は父ちゃんの仕事って好きだし、俺はでんき屋を継ぐってのは嫌な事じゃ無いからさ、それはそれで良いんだけど、こんな俺でも、一応今はプロのサッカー選手が夢だからさ。今のままだとプロになれないなら、今以上に練習頑張れば可能性はあるかもしれないじゃん」
…なんて前向きな奴だ。でも、高橋の言葉は、なんとなく今の俺の悩みが、下らない事だって言ってる様に聞こえた。
「もし、大輔が未来の自分に満足してないなら、これからその未来を変えれる可能性がある訳じゃん?それってスゲェラッキーだよなぁ!」
「いや、俺はさ、未来では充分満足してたんだよな」
「ならさぁ!もっと満足出来る様に出来るかもしれないじゃん!」
目を輝かせて語る高橋の言葉は、完全に俺の迷いを打ち砕いた気がした。
俺は未来に満足していた。でも、今、俺は日本代表クラスの実力を持った状態で、小学生からやり直せるんだ。そりゃ、フィジカルやらを考えれば、三十歳当時と比べれば劣るだろうけど。
でも、今から頑張れば、俺は未来で香田の様な…いや、それ以上のサッカー選手にだってなれるかもしれないんだよな。
「…良かったぁ~。その顔だと、なんか悩みは解決出来たみたいだな?」
「え?」
「タイムスリップがどうとか、正直夢がある
ん?コイツ、散々乗ってくれたのはやっぱり芝居で、本当はタイムスリップなんか信じてないのか?
…でもまぁ、なんかもうどうでも良いかな。
「なんだよ。俺が嘘ついてると思ってんのか?」
「ハハハッ!別にタイムスリップが本当かどうかは俺にはわかんねぇよ。俺、頭良くねえし。でもさ、それが本当でも嘘でも、お前なら必ずプロのサッカー選手になれるだろぉ?お前は多分…いや、昨日のプレイ見てたら、お前は
…くそぅ。なんなんだよコイツ。本当に小学生かよ。どんだけ良い奴なんだよ。
「…ええ!?何泣いてんだよぉ!?俺、そんなに悪い事言ったかぁ!?」
うっ、思わず涙が…。
「う、うるせぇよ!俺は未来の日本代表の“エースストライカー”になる男だぞ!よーし、高橋!今からボール蹴ろうぜ!」
「ええ!俺、お前と違って練習帰りなんだけど!」
そうだよな。確かに俺は自分の未来に不満は無かった。でも、もっと凄い未来を作れる可能性が、今の俺にはあるんだよな!
だったらなってやるさ!香田以上の、日本を…いや、世界を代表するサッカー選手に!
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