第10話 てあて


 トモリはふしぎ。


 つらいとき、とか

 くるしくて、なきそうなのに、

 なけないアヤカシだれかに、よくきづく。


「てあて!」


 そういって、トモリは、ギュッとだきしめる。


 ちいさな、こどう。

 ちいさな、からだ。

 でも、とても、あたたかい。


 いきて、いいよ。

 そばにいて、いいよ。

 ないても、いいんだよ。


 そんな、ことばが、つまってる。


 だから、みんな、トモリのまえでは

 うれしくて、あたたかくて、やさしくて

 そっと、なみだを、ながすんだ。


 だから、みんな、トモリのまえでは

 ほんとうの、じぶんのままで、いられる。


 いつわっても、つよがっても

 トモリのまえでは、むいみ。


 すぐに、きづかれちゃうから。


 トモリが、なけないとき、くるしいときは、だきしめにいく。


 だいじょうぶ、だいじょうぶ。


 ひとりじゃ、ないよ。


 いままで、ありがとう、って。

 だいすき、だって、つたえるの。



***

とあるアヤカシの独白

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幸福のカタチ  あさぎ かな@電子書籍二作目 @honran05

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