続報七 微風


 またまたワタシです、魔法の笛です。皆さん再びこんにちは!


 舞踏会の後、しばらくしてカトリーヌちゃんが報告してくれました。


「ローズさんがマキシムさんと婚約を発表したのよ」


 アノ男が上司の娘にフラれたのです。ということはカトリーヌちゃんにもチャンス到来です。でもあまり彼女は嬉しそうにしていません。むしろ寂しそうです。


「ガニョンさんは弟さんに先を越されたけれど……きっとすぐに彼にも良い縁談がまとまるわよね……」


 カトリーヌちゃん、自分に自信を持って! アノ男はイヤラシーい目で貴女のことを見ているだけあって、貴女に好意は持っているはずなのだから。ワタシは貴女がエロ男が好きだと言うならしょうがないわ、この際応援は惜しまないわよ!


 ワタシは不本意ながらもカトリーヌちゃんの恋が実るように祈ることにしました。彼女の幸せがワタシの幸せなのですから。


 そして季節は流れ、また王都に厳しい冬が訪れようとした頃にやっとヘタレスケベはカトリーヌちゃんに交際を申し込んだのよ。


「カトリーヌ・クロトー様、私と結婚前提でお付き合いして下さいますか?」


 カトリーヌちゃんが待ちに待った告白キターッ! ワタシも彼女の鼓動が速くなるのを感じていました。


「ガニョンさんが好きです。この気持ちを口に出して言える日が来るなんて……」


 良かったね……カトリーヌちゃん……




 それからというものカトリーヌちゃんは毎日とても幸せそうなのです。ワタシも嬉しくなってしまいます。


 けれど……時々ワタシは役目を下ろされることがあるの……と言うのも、アノ男のせいなのです!


「カトリーヌ、お願いがある……えっとその……君の胸に顔を埋めたい」


「何だ、そんなことですか。お好きなだけどうぞ」


 ナ、ナント! カトリーヌちゃんどうして? 結婚するまでそんなフシダラな行為を許しちゃダメ! ソノ男が調子に乗るじゃないの!


「ああ、カトリーヌ……」


 キャー、スケベ顔が近づいてくるわ! 助けてぇー!


「グッ……」


「い、痛いわ、ティエリー」


 ぐ、苦じいぃー!


「カトリーヌ、ごめん。君の肌を傷つけたくないから……この笛はとりあえず外しておくよ」


 アーレェー!


 ワタシはあっという間にカトリーヌちゃんの首から外され、長椅子の前の卓上に置かれてしまいました。


 そしてアノ男はカトリーヌちゃんの……私の定位置によだれを垂らしながら再び頬ずりし始めて……口惜しぃー!




 その後、味を占めたアノ男はカトリーヌちゃんに会う度にワタシを邪魔者扱いしてくるのよ! なのに、カトリーヌちゃんはとても幸せそうで益々輝いているのです…… 


「笛さん、今日はあなたを置いていくわね。ティエリーと一緒にご両親と食事をするだけだから。それにティエリーは……二人っきりになるなりぱふぱふしてくるでしょうし、馬車の中でもきっと……その度にあなたを外して、もし無くしたら大変だもの」


 カトリーヌちゃん、どうしてワタシを置いていくだなんてそんなヒドイこと、頬を赤らめて幸せそうに言うの? ワタシも一緒にお出かけしたいの!




 なんと結婚式の日もワタシはお留守番でした!


「笛さん、今日は大事な日だし、私はずっとティエリーの側に居るから……でも、これからもよろしくね」


 花嫁姿のカトリーヌちゃんは今までにないくらい綺麗でした……確かにアノ男と想いが通じ合ってからは彼女の悲しそうな顔を見ることがなくなったのは確かね……カトリーヌちゃん、おめでとう……ぐすん。




***ひとこと***

魔笛とティエリーのせめぎ合い、でした。

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