続報二 春待ち月


 カトリーヌとの想いが通じたら、次にすることはもちろん婚姻許可証の申請だ。お互いの親に二人で会いに行かねば。まずは近場、王都に住んでいるうちの親に根回しする。


「父上、母上、私近々結婚しようと思っています」


「は? 結婚?」


「ティエリー、何ですか、藪から棒に! お付き合いしている方が居るのならまず会わせて下さいな」


「そうだよ、全くうちの息子達は二人とも唐突過ぎるよ!」


「はい。今度うちに連れて来ます」


 両親が反対する理由がないのは分かっていた。母もカトリーヌと同じ、男爵家出身である。両親揃ってマキシムの相手が侯爵令嬢でしかも王妃の姪ということにビビッていたくらいだ。


「どんな方なの?」


「私の執務室の後輩で、気立てが良くて素直で可愛い女性です」


「マキシムが以前、貴方が片想いをしているって言っていましたけれど……想いが通じたのかしら」


「はい。カトリーヌはただでさえローズの身分が高いのを気にしているので、うちに連れてくると言ったらひどく緊張すると思うのです。ですからあまり値踏みするような目を向けないで欲しいのですが……」


「ティエリー、それはもちろん分かっております。私も昔を思い出しますわ、貴方」


「私達はお前が望んだ相手と幸せになれるのならいいのだよ。カトリーヌさんもそんなに身を固くすることはないからね」


「父上、母上、感謝します」




 カトリーヌに両親に会って欲しいと早速頼んだ。


「まあ、ティエリー。私どんなドレスを着たらいいのでしょうか?」


「君は何を着ていても美しいよ。どんな粗末なドレスでも」


 もちろんスケスケネグリジェやセクシーランジェリー、一糸纏わぬ姿もなおイイに決まっている。


「もう、ティエリーったら……ガニョン伯爵夫妻やご家族の前に着て行けるようなもの、という意味ですわ」


 はっ、俺の心の声が聞こえていたか? そういう意味ならネグリジェ以下は相応しくないな……




 そしてカトリーヌに両親を会わせ、我が家で四人で夕食を取った。両親は手放しで喜んでいるようだった。


「色々と至らない所もあると思いますが、どうぞよろしくお願い致します」


「うちは長男も次男もお嫁さんは才女だね。何はともあれ二人とも幸せを掴んでくれたのが私たちにとっては嬉しい限りだよ」


「もったいないお言葉です」


「また式の準備に忙しくなりますわね!」


「お前なあ、気が早くないか?」


 全然早くないですよ、父上。よし、自分の両親は攻略した。次はカトリーヌの両親に対峙する番だ。




***ひとこと***

長男の片想いもやっと実って結婚も決まり、安心のご両親でした。

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