カトリーヌ 番外編

続報一 天弓


 ティエリーに告白された次の日の朝です。私はドキドキしながら目を覚まし、昨夜彼に優しくキスをされた唇を触ってみました。この全てが夢だったとか、そんなことはないと信じたいです。私は彼の唇の感触や抱きしめられた時の胸板の温もりをしっかりと覚えているのですから。


 鏡に映る自分の顔ににこやかに話しかけてみました。


「私、本当にティエリーの恋人になったのよね……キャー、夢みたいよ!」


 ニヤニヤしていたと言った方がいいかもしれません。




 そしていつもの時間に出勤しました。何だか目に入ってくる景色でさえも輝いているようです。ドキドキしながら執務室に入りました。私が一番でした。荷物を置いて席に座ろうとしたところ、ティエリーが出勤してきました。


「ガニョンさん、お早うございます」


 昨日の今日ではティエリーと呼べませんでした。それにここは職場ですから。彼は辺りを見回して、なんと私の唇に一瞬口付けました。


「お早う、カトリーヌ」


 夢ではありません。彼の柔らかな微笑みに私は目がハートになっているに違いません。


「ティエリー、私昨晩は幸せすぎて、興奮してしまって……あまり眠れませんでした」


「俺もだよ」


 職場だというのに、私は朝から頬が緩みっぱなしです。


「ねえ、カトリーヌ、今度の休みは予定あるの?」


「はい、年末の市に行こうと思っています。毎年家族にちょっとしたものを買って送っているのです」


「もしかして去年俺にコーヒー豆を買ってくれたのもそこで? 俺も一緒に行っていい? もちろん君が良かったらだけど」


「ええ、是非。でも庶民ばかりの市ですよ?」


「じゃあ、着古した上着を着て徒歩で行くかな」


「はいっ」


 初デートの予定が立ったところで他の同僚たちが出勤してきました。私はまだまだニヤニヤ笑いが収まりません。




***ひとこと***

ラブラブバカップル予備軍の二人でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る