13.消えてください。今すぐに

「ッ!?」

二が男に捕らわれ、鋭利なナイフを首に当てられる。


「つぐッ!?」

風麻一が叫び、能力を発動しようとする。


「ま、待ってよッ!?もしッ!!僕やこの子達に攻撃したら!!こっ、この女の子を殺すからねッ!?僕は、ほ、本気だよッ!?」

男は白く長い髪を揺らしながら、がたがたと震えていた。


「アンタ大丈夫?脅し慣れてないクセに無理しちゃって」

「ウッ、うるさいッ!?僕はッ!?本気だからッ!?本気だからねッ!?」


男は涙目になりながら、二の首に刃先を突き立てる。


「やめろッ!!つぐ、挑発するな!!分かった、分かったから....落ち着け」


風麻一が手を前に出して伝えれば、男は息を荒げながら刃先を少しだけ引いた。


「よし....じゃあ、まず....電車を止めるんだ....そして、僕の前に、全員並べ」

(敵の目的は俺達の阻止と....始末か)


夜安が朝日に目配せをすれば、朝日も同じように視線を重ねる。

同時にすれ違いざまに、阿知あちが夜安の耳元でささやいた。


「僕達が高速で動くのは簡単だ....しかし敵の能力が分からない今、迂闊に動かない方が良いよ....」

(確かに、もしあの男が俺達全員に対抗出来る能力だとしたら....風麻の娘に危険が及ぶ)


指示の通り藤沙暗が電車を停止させる。

そして端から、藤親子、夜安、朝日、風麻一、阿知の順で男の前に並んだ。


「よし....良いぞッ....そのままッ....膝をついて....」


指示通り全員が膝を着いたのと同時に、白い怪物が周りに集まってきた。

男は一番端にいる沙暗の前に立つ。沙暗は「おや?何かまずそうな雰囲気ですね」と笑った。


「お前....最後に....言い残したいことは、あるか....」

「ちょっと、アンタまさか....」


二の表情が強張る。夜安の心臓が大きな音を立てた。嫌な予感がする。

沙暗は少しだけ考える素振りを見せる。

そして、ああ!ありました!と嬉しそうな声を上げた。


「──消えてください。今すぐに」


沙暗が笑う。

同時に男が目を見開き、合図を送れば─、


瞬間、白い怪物達は一気に沙暗に食らいついた。


「父さんッッ!!」


藤沙明が叫び、沙暗は白い怪物達によって食われて行く。

夜安が呆然とし、朝日は目を見開く。


(こんなに、呆気なく....)

「あっははははははははははははははははははッッ!!良いぞ良いぞその調子だあああああ!!僕の子達はあああ!!やっぱり最強だああああ!!これで!!僕も!!父さんの力になれるッッ!!」

「僕の子達って....もしかして....アンタが....」


男が喜ぶ中、二が口を動かした。

同時に阿知親子が視線を重ね、その場から姿を消す。


「へ?」


二は下を向いたまま、身体を緑色に光らせる。


「あんたが....不審者達を....作ったのね....!」


男が呆気に取られた瞬間。

二はナイフを持つ手を払い避け、男の顔面に、拳を一発食らわせた!


「グ、ァあああッ!?」

「アンタがッッ!!殺したのねッッ!!」


男が床に倒れたのと同時に─、黄色い光が電車全体を包み込んだ!


「「第二形態──

      ムーブ!」」


白い怪物達は一瞬にして姿を消し、電車から一掃された。


「あの敵達は....まとめて移動してしまったよ....」

「勿論、俺がフルボッコにした上でな!」


阿知親子がそう告げれば、男は顔を真っ青にした。


「う....ああああああああああああぼくの子があああああああああ」


男が叫ぶ。

その隙を見て風麻一が娘の手を取り─、二人の視線が交わる。


「「第二形態──、

       スペース!!」」


風麻親子が能力を発動すると、突然男の背後に黒い空間が現れた。

男は空間に、瞬時に足を捕らえられる。


「なっ、なんだこれ....や、やめて....やめてええええええええええ」

「そのまま亜空間に取り込まれなさい!」

「そして、消えろ!!」


ずるずると片足が引きずり込まれ、そのまま下半身全てが黒い闇に消えて行く。


「あ、ああああ、ああああああああああ嫌だああああああああああああ」


男が泣き叫べば、その手の中に白く長い紐のようなものが現れた。


「何だ....アレ....」

夜安は呆然としながらもその異変に違和感を感じた。


「白い、紐....」

朝日が呟けばそれは段々と長くなり、風麻達の足元まで伸びて行く。


(皆、見えていないのか!?)


紐が二人の足を掴み、勢い良く動き出した!


「風麻ッ!!下だッ!!」

夜安が叫んだのと同時に風麻親子は紐に足を取られてしまう。


「何!?」

「何かが!アタシ達を引きずりこもうとしてるわ!」


そのまま勢いを持ち、二人は亜空間の中に吸い込まれて行く!


「チッ!」


朝日が飛び込み、二人の腕を掴んだ。


「あははははははははは!!お前達も、道連れになれええええええええ!!」

「クソ、がああああああああああああああ」

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