10.新たな敵の気配
【─同時刻。某所。─】
「ああああああなんでええええええええ」
とある男は、白くウェーブがかかった長髪を揺らしながら子供のように泣き叫ぶ。
「うるさいぞ。スリング」
男の隣に座る黒髪の男は、溜め息を吐きながらそう言う。
「スリングはホントやらかすよなあ?まあ任せろ!今度は俺が代わりにやってやっから!」
そして楽しそうに笑うのは、緑色の髪をした褐色肌の少年。
「だってだって僕の自信作がまたやられてええええええええ」
「──おい。うるせえぞ」
とある男の声が響いた瞬間、三人は一瞬にして口を閉じた。
声の主は煙草を口にしふう、と煙を吐く。
黒いニット帽に手を当て、濃い紫色の髪を揺らし、そして口を開いた。
「....父さんから通達だ。予言の通り....ベビーカー野郎達が遂に揃いやがった」
「あああああああムカつくムカつくアイツらくっそムカつくよおおおおおお」
「相手も四人か?」
「ハッハッハッ!四人じゃなくて四組だろ四組!」
「親子で固まりやがって気色悪いんだよおおおおおあああああああ」
「スリング!!テメェはいつまでゴミみてえなことを言ってやがる!!」
男は煙草を床に捨てると、黒いブーツの底でぐしゃりと踏み潰した。
「....父さんは、俺らに失望してんだぞ」
「あ....ッ」
スリングという男は肩を震わせると、そのまま黙りこむ。
「要するに"早く片付けろ"という事だろうよ。それでだ、チェアー。お前はどうしたい?」
「早々に始末するべきだな」
チェアーと呼ばれたの黒髪の男は、躊躇うことすらなく即答する。
「俺も同感だなぁ!それにパパから連絡が来たってことは、これは命令だよ!命令!」
「さすがシートは話が早えな」
シートと呼ばれた、褐色肌の少年は笑う。
「駒じゃ手に負えねえっつうことは、俺等で始末すりゃあ良い。」
そしてハンドと名乗る男は明らかにリーダーの風格を現していた。
「....僕は、お、お父さんをがっかりさせたくない....」
「同感だ。父の期待を裏切る訳にはいかないからな」
「やろうぜ!俺ら四人で!」
どうやら三人のモチベーションも上がってきたらしい。
その姿を見て、ハンドは笑う。
「良いかテメェら....俺達は奴らを倒し、父さんを助ける。必ずだ。」
男達は笑い、頷き合った。
夜安達は未だ知らない。
それぞれの闘いが今、幕を開けたことを──。
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