5.第四形態

──夕飯を食べ終え、ソファで寝てしまった父親の表情を眺める。

熟睡している事を確認した朝日は、気付かれないように玄関へと向かった。

マンションの外に出て、夜の空気を吸い、辺りを見渡す。


「.......こ....ろす」


するとそこには、先程の不審者の姿があった。

まるで得体の知れない化け物のような姿になったそれは、異臭を放ちながら近付く。

父が見たらショックを受けるだろうな。と朝日は思った。


「やけに視線を感じると思ったんだけど、やっぱりお前だったんだなァ....見たところ、リベンジしにきたってとこか?あ?」

「????....ゴぉ、ロすの」

「それは俺を?それとも、父ちゃんを?」

「ゥう!!ゴろ!!さなきゃ、なの!!かぞぐは!!」


男は思い切り叫び、とてつもないスピードで朝日に襲いかかった。

血と何かが腐ったような生々しい臭いが辺りに充満し、男の腕が朝日のすぐ目の前まで近寄ったその瞬間──、


「ああそう....なら、行く先はひとつだな」


奇妙な音が立ち、それと共にゆっくりと身体は黒いオーラに包まれる。


「....第四形態」


男は腕を伸ばした体勢のまま目を見開き、そしてぼろぼろと大粒の涙を流した。

その目の中には恐怖の念と共に、この世のものとは思えない形相が映し出され──


そのまま、男は目の前の者によって命を絶った。

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