第32話 ステータスと魔力を計りましょう

(ここは…)

(赤子転生…か…)

俺は周囲を見回す。

豪華な調度品に囲まれた、暖かな部屋だ。


 生まれたての赤ん坊に視力などほぼ無いものだが、異世界転生時には何故か良く見えるものだ。

(貴族か、王族だな。いつも通りだ…)

薄れ行く意識の中、俺を見て微笑む美しい女性を見た。


「では、15歳の儀式としまして、この水晶球でステータスと魔力を計りましょう」

「我々の子なら、水晶球を割るほどの魔力の持ち主に違いない!」

「まあ、アナタったら。うふふ」


 その瞬間、俺の意識が戻った。

「う…戻った…か…」

「では…」

老人が掲げた水晶球に俺の魔力が流れ込む。


「…あっ!ちょ!まっ!!」


 俺の蓄積に蓄積を重ねた膨大すぎる魔力が水晶球に流れ込む。

その魔力の奔流は瞬時に水晶球を打ち砕き、四散霧消した水晶の欠片は光速度を超え爆裂した。

爆発の威力は凄まじく、一瞬にしてその世界を含む天体も、主恒星も、帰属する銀河すら飲み込む。

俺の魔力はとどまることを知らずに加速度を保ったまま全宇宙を焼き尽くす。

後に残された残滓も全てが高エネルギーの霧となり、閉じた宇宙を何度も何度も駆け巡る。


 8兆年後、ようやく俺の魔力を元にしたエネルギーの波は収まったが、後には虚無が広がるばかりだった。


 俺は虚無の中、独り浮かび舌をだす。


 油断した。やっちまったなぁー。てへぺろ☆

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