第33話 こうして後ろから…

 後輩のモブ子Aとコンビニで飯を買い、会社に戻ろうとしたその時。

「あっ!センパイ!トラックが!」

「えっ?!どこ?」


 コツン。

右足に、軽い衝撃。


 フィーン。

俺の右足は、膝から下だけ消えた。


「可愛い~。ちっちゃい転トラ~」


 テーンテーン。

そこには、20センチ程の転生トラックが震えていた。


「野生の転生トラのヒナだな」

「どうしましょう。交差点に戻せますかね?」

「待った!触らないで!」

迂闊に野生の転生トラックへ触ると、未知のチートに感染する可能性がある。


 取り扱いは、慎重にだ。

「いいか?転トラのヒナは、こうして後ろから…」


 テーンテーン!

転生トラックのヒナは、心細そうに鳴き声を上げた。


「そらっ、戻れ!」

転生トラックのヒナを交差点の大海原に還す。

ヒナの内には天敵も多い。

立派な転生トラックになれるかどうかは、大自然のみぞ知る、だ。


「流石センパ~イ。慣れてますねー」

「まあ、仕事で日々向き合ってるからな」


大きく…なれよ…。


俺の右足はすぐに戻ったが、冒険の果てに革靴の先がとんがっていた。

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