第30話 大変な上玉でございますよ

「よし、そろそろ異世界転生でもするか」

俺は腕時計に目をやった。


 通りを見渡し、1台のトラックに目を付ける。

「う~ん、まあいいか。それっ!」キキー、ドン!


 そして俺が異世界転生をすると、原核生物になっていた。

この世界では、まだ多細胞生物まで進化していないのだ。


「てっ転生したら…バクテリアだった件に…ついて…ッ!」

仕方が無いので、俺は原核生物なりにドヤる道を模索した。


 進化を重ねた俺が通ると、辺りの原核生物達はどよめいた。

「見て…なんてステキな繊毛」「鞭毛も強そうだ」ザワ…


 さらに名前を売るため、俺は悪名高い原核生物達を打倒した。

「バカな…俺の必殺仮足二重殺が通じないとは…」ドサッ

「フン…」


 こうして、おれはすっかりと原核生物界の勇者として名を馳せた。

そんなある日。

「勇者様…」

「なんだきさま」

「実は、勇者様にお買い上げ頂きたい奴隷が…フヒヒ」

「奴隷だと?」


「…このアルファプロテオバクテリアでございます…大変な上玉でございますよフヒヒ」

そのアルファプロテオバクテリアは首に枷を嵌められ、潤んだ瞳で俺を見上げた。

俺は本来奴隷などに興味はないが…このアルファプロテオバクテリアには、どこか惹かれる所がある。

「…いいだろう」

俺はそのアルファプロテオバクテリアを奴隷として手に入れた。


 その日の夜。

「お前は俺に奴隷として買われたんだ…わかるな?」

「はい…ご主人様…」


 俺は彼女の滑らかな細胞膜に鞭毛を沿わせる。

「あっ…はぁ…ん!」

「ほう…細胞膜にADP/ATP輸送体があるのか…」

「はい…んっく」

「好気呼吸か?」

「TCA回路が…あぁん!」


「どれ…DNA配列を見せてみろ」

「やっ!そこは…ッ!」

「UGAがトリプトファンをコードしているな…」

「そっそんなに広げて見ないでぇ!」

「普通なら終止コドンとなるはずなのに…」

「ごっ、ご主人様ぁ!これ以上はぁん」


 俺は、一晩かけてじっくりとアルファプロテオバクテリアを取り込んだ。

「いいな?これからは俺の為にATPを生成するんだぞ?」

「はい!ご主人様!」


 それから魔王が生まれ、この世に災厄をもたらすのは、まだ数十億年も先の話…。

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