第29話 眼鏡をクイっとした

「あっ、永山さ~ん!」

「なんだい。月形君」

俺は、情シスの永山さんを訪ねた。


「ちょおっと、お願いしたい事が…」


 永山さんの、眉がピクリと上がる。

「嫌な…予感が…するねェ~」


「いえね、僕のステータス画面なんですけど、転生時にスキル自動発動するようにしたくて…」

「ほお…」


 明らかに、永山さんから放たれる”圧”の質が変わった。

「組み立てをですね…VBAベースで作ってもらえないかと…」

「…つまり、俺に”ソースコード”を…書けと…?」

「ステータスを、マクロ化したいんスよねェ~」

「…仕様書も要件定義書もなく、か…?」

「お願い、できないっスかねェ~?」

二人の間に緊張が走る。


 ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド


「それなら、社内作業依頼書を出すのが、スジじゃないかねェ~?」

「ぶっちゃけ、使うのは俺だけなんで…ッ!」

「工数掛かるの、分かってるんだよねェ~?」

永山さんは、眼鏡をクイっとした。

その眼差しは、鋭い。


 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


「アンタは先日ッ!飲み会でッ!ステータスに称号『恐妻家』がついたと言っていたッ!」

「な…ッ!」

「俺ならッ!その称号をッ!ステータス改変できるッ!!」

「キ、キサマッ!!」


 こうして後ろ暗い取引は成立した。


 社内ルール?なにそれうまいの?

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