第16話 プロジェクトメンバー
「月形く~ん。ちょっといいか~い?」
「はい、課長。なんでしょう」
嫌な予感がする。
「…と、いう訳でね、人選も全て任せるから、頼むよ~」
ハゲ課長が言うには、俺のやっている異世界転生に、会社は将来有望との判断を下したらしい。
様子見ながら僅かな予算もつき、複数メンバーでのプロジェクトとなる。
そこに参加する、メンバーを選定せよとのお達しだ。
プロジェクトメンバー、か…。
当然、異世界転生に明るい人材を集めなければならない。
となれば―――。
―――武井 篤弘。頼れる同期。
過去、俺の異世界転生に着想を得て悪役令嬢転生にビジネスチャンスを生み出すも、計画は頓挫した。
「はぁ…王子ぃ…」
「武井…?」
「うわぁっ!なんだよ、急に声を掛けるなよ!」
「お前、また乙女ゲームを?」
「いいだろっ!別にっ!」
「お前が良いなら、俺は別に何も…それより今日は頼みたいことが…」
―――斉藤 彼方。部署違いのパイセン。
面白半分で異世界転生に手を出すも、誤って原付BBAをヒロインに据えたパリピ系ウェ~イだ。
「よぉ、どうした月形。フゥー!」
「ぁ、サイトーパイセン。まだ、異世界転生って興味ありますか?」
「もぉBBAはこりごりだぜ」
「いますよ、美少女」
「ウェ~イ!」
―――永山 大輔。エルフ嫁持ちの先輩。
ある日現れたビキニアーマーのポンコツ褐色エルフを嫁にした先輩だ。
「永山さん、最近奥さんはどうですか?」
「それがなー、こないだ急にワーウルフ幼女が現れちまって」
「増えたんですか??」
「これがまた可愛くて、娘みたいに思えてるよ」
「あー、イイっすね。羨ましいッス」
「嫁と同じでポンコツだけどな」
「ところでなんですが…」
―――恒山 秋彦。我がライバル。
「恒山…先輩…」
「よぉ~月形ァ~」
彼は、手にしたバタフライナイフをくるくると回している。
「ここにゃァ、ミルクは置いてないぜェ~」
「「ゲヒャヒャヒャヒャ」」
周りのトゲトゲ肩パット達が笑い声を上げる。
「実は、今日はお願いしたい事が…」
―――そして俺、月形 賢一郎。
既に異世界転生数50は下らない、いわばこの道のプロといっていいだろう。
今、ここに、最強の五人が集まった―――。
筈なのに。
「いやぁ楽しみだねぇ」
取引先の狸親父。なぜお前がここに。
どうもウチのお偉いさんと個人的な付き合いもあるらしく、話を聞きつけ捻じ込んできたらしい。
「まぁ私の事は、外部オブザーバーだと思って、ね?」
「月形君!お客様なんだからね!頼むよ!」
ハゲ課長め…知ってやがったな。
上司には逆らえない、サラリーマンの悲しいサガよ…。
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