第5話 選ばれし15人の勇者たち

「…ここは?」「なんだ…一体」ざわざわ…


 しくじった!コードに足を引っかけ、コピー機に頭を打ち付けてしまった!

その弾みで俺は『予定外の不運な死』と判定され、異世界転生した。

それはそれで良いのだが、今回は問題がある。


 部署内15人全員が、異世界転生に巻き込まれたのだ!


「あ、月形さん。これって一体なんだと思いますか…?」

生と死の狭間、転生前の亜空間で皆が不安な様子でいる。


「大丈夫だ!みな落ち着け!」

いや、これはこの先が思いやられる。ここはひとつ…。


 魔力バーストモード、オン!

 絶対支配領域(ファンタスティック・スペース)、展開!

 時空間封印魔法(タイム・オブ・タイムス)、発動!

 さらに絶対凍結防御魔法(アルティメット・バリヤー)、発動!


 これで、同僚たちは凍結したまま動き出すことは、無いだろう。


『よくぞ参った、選ばれし15人の勇者たちよ…って、アレ??』


 俺は、満を持して豪華絢爛に登場したのに滑ってしまった神にかくかくしかじかと説明し、俺が一人で世界を救うからと説得した。


 15人分の各種チートを手に入れ、かつ過去のチートを持ち合わせる俺ならば、訳ないことだろう。

こうして俺は焦りながらも、その世界を大至急の大車輪で救うことにした。


「これが…神を超える魔王の力!こんな相手には勝てないぃ~!」

「うるさいだまれ」

その世界の勇者を押しのける。


「吾輩が、吾輩がこんなひ弱な生命体にいぃ~!」

「うるさいだまれ」

超級魔王をちょっぱやで片し、口上も巻きで終わらせた。


「倒したぞほら早く、早く!」

『あ、はい』

視線の泳いでいる神をよそに、俺は帰還の準備を進める。

そして、部署全員が無事に現代へ戻ることができた。


「あれ…いま…なんか?」

「どうした、みんな?夢でも見たか?」


 俺はとぼけた。異世界転生も、楽ではないな…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る