第4話 ビジネスチャンス

 ここ数回、異世界転生は調子が良かった。

テンプレなチート。テンプレな展開。テンプレなヒロイン達に、ベタなオチ。

が、しかし、今回は…。


「農業系スローライフかぁ~~~~」

俺は、がっくりと肩を落とした。

前世記憶で農業改革があれよあれよと進むだけなら良い。

しかし経済やヘタすりゃ司法・立法・行政にまで手が伸びるパターンもあり得る。


「もぉ~、賢一郎サマったらあ!(はぁと」

「今日は私といっしょだよお!ぷんぷん」


 チャンチャン☆


 あぁ、良かった。特に話の広がりは無く、適当にヒロイン達とキャッキャウフフとスローライフを楽しんでいる内に幕が閉じた。

正直いつどこでどう話が広がるか、それとも突如シリアス路線に行きやしないか、生きた心地がしなかった。

そういや、サブヒロインに褐色銀髪ではないものの、エルフ娘が居たな…。

しかしわざわざ課長のためにヒロイン連れ帰りなど面倒なことはしたくない。

それが切っ掛けで話が広がりだすことも、十分にあり得るからだ。


 俺は帰社し、転生データベースに今回の異世界情報を入力した。

「結構、たまってきたけどまだまだだなぁ~」

「よ、月形。やってるな」

「おぉ、武井。どした?」

こいつは武井 篤弘。同期ってヤツだ。


「異世界転生、調子いいんだって?」

「ぼちぼち、だな」

「実は俺も考えている事があるんだが…聞いてくれるか?」

「もちろん」


 俺と武井は、同期という事もありよく仕事の愚痴や相談をする仲だ。

部署は違うが、信頼できる。

「お前の異世界転生にヒントを…というか、まんまパクリなんだが」

「うん?」

「悪役令嬢で、攻めようと思う」

「あぁ~~~」


 悪役令嬢への転生は、俺tueee系の異世界転生と並ぶ一大ジャンルだ。

そこにビジネスチャンスを見つけるとは、武井もやるな。


「お前がやってるのは、チートで無双するヤツだろ?被りはしないと思うが」

「だな。そもそも、俺は男…って、お前もだろ。どうする気だ?」

「転生自体は、有望な三年目の後輩に、任せようかと」

「有望って?」

「毎日昼休みにはスマホとにらめっこしてる。家に帰っても同様らしい」

「…それが、乙女ゲームだと?」

「おそらく、だが」

「ふ~ん?良いんじゃないか?各企業での需要もあるだろうし」

「だよな。女子社員が片っ端から悪役令嬢に転生されても、各社困るだろうから」

「アリだな」

「よし、やってみっか!」

武井は、決意をした顔で去っていった。


 仕事とは、良きライバルが、いてこそだな!

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