第3話 ちょっと相談なんだけど

「なあ、月形君」

「なんですか?課長」

ハゲた頭をさすりながら、課長が近付いてきた。


「君、最近、異世界転生してるんだって?」

「えぇ、客先にこちらの不手際でご迷惑をお掛けし…その対策として」

「そうかあ、そうかあ。いやあ君はいつも色々先回りして仕事を進めてくれて、助かるよお」

なんだこのハゲ、何が言いたい?


「でね?ちょっと相談なんだけど」

「えぇ」

「例えば、転生先から、ヒロインを連れて帰ってくるなんて、どうかなあ?

「えぇ?ヒロインを、こっちの世界にですか?」

「例えば!例えばの話で!」

このオッサン、何を言い出すかと思ったら。


「いやぁ~例えばウチの部署にさあ、褐色銀髪つり目ダークエルフ美少女がいて、お茶くみなんてしてくれたらさあ?部署内も華やぐと、思わな~い?」


 とんだスケベオヤジだな。

お茶くみ要員に褐色銀髪つり目ダークエルフ美少女を所望するなんて。

家帰ってカカァに茶ァ入れてもらえよ!


「ぇ~はい。善処いたします。タイミングもありますし、そもそも連れ帰りの可否は世界設定にもよるので」

「そうかぁ~、うんうん。できたらで、いいからね。できたらで!」

ハゲ課長は、そういいながらルンルンでどこかに立ち去った。


 こっちは遊びで異世界転生している訳ではないのだが…。

大きくため息を吐いたところに、声を掛けられた。


「セーンパイ!お疲れですかあ?」

二つ後輩のモブ子Aだ。

「あぁ、ちょっと課長に無理を言われてね」

「大変ですねえ。でもセンパイならきっと大丈夫ですよ。ガンバッテください!」


 モブ子Aは社内でも評判の可愛い女子社員だ。

しかし俺の眼中にはない。

何故なら異世界には絶世の美女・美少女がゴロゴロとしていて、殆どの場合で都合よく俺になびくからだ。

それでも激励はありがたい。

「よし、もうひと頑張りするか!」


 俺は、気を新たにトラックを探しに外へ出た。

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