第51話~ママの言う事を聞きなさい~

美由紀と希望は竜機に向かっていた。


「希望ちゃん、これで元通りなんだよね」


不安そうに美由紀が言うと希望はいつもと変わらない口調で。


「多少のずれはあるとしても、ほぼ元通りになってるはず」



竜機まで辿り着きドアを開けた時、2人の後ろから声が聞こえた。


「柳達が戻らないから変だと思ったが・・なるほどな」


2人は竜機に乗り込むのを止め、聞き覚えのある声の方へ向いた。


「それをどこから持ち込んだ、予定が狂ったじゃないか」


2人の目線の先にはダークソードが立っていた。


2人は無言で同時に魔法を唱えようとした。


「おっと待った、上からここ狙ってるからな、何ならその竜機とやらで確認してごらん」


ダークソードは空を指差した。


二人は詠唱を止め、希望が竜機に入り確認をし出てきた。


「美由紀、衛星上に戦艦2隻」


希望がそう言うとダークソードは拳くらいの大きさの種の様な物を出すとそれを2人の足元に投げた。


その種が止まると、弦が生えてその先から大きな4枚葉が育ち2人を包んでしまった。


「竜機は頂いておく、ちなみにそいつは魔力が好物で魔力が無くなるまで育ち続けるから」


そうダークソードが言うと転送したのか気配が無くなった。



包まれた葉の中では美由紀が希望の足を抱える様な形で包まれていた、葉の内側にはドロッとした黒い液体の様な物が流れていてそこに触れた部分に痺れを感じ始めた。


手がフリーな希望が2人を隔離しようと膜の様な防御魔法を唱えたが数秒もしないうちに消えてしまった。


「魔法が吸われてる、何とか脱出方法を考えないと」


珍しく慌てた希望がそう言うと体が少しずり落ちた。


「きゃー」


「ごめん、ちょっと滑った」


「竜機も無いし残った魔力で2人どころか・・」


そう希望が言うと希望が落ちない様に支えながら美由紀が苦しそうに


「ひ、1人なら出れるの?」


「出れると言うかこのまま未来に転送する、瞬間的な魔法なら吸われる前に行けるんじゃないかって・・魔具の魔力を足しても2人分の魔力も無いし、時間軸を超える代償に消す記憶も・・もう残ってない」


希望がそう言うと、美由紀は閃いた。


「魔力は供給できる・・記憶は?私の記憶で何とかならない?」


考えも付かない事を言われた希望は怯えた声で。


「試した事無いし、他人の記憶なんて・・しかも大事な記憶から消えてしまう」


「希望のジン、出来るの出来ないの?もう手が痺れて・・」


そう言われた希望のジンがなるほどとばかりに。


「出来ない事は無いが、術者以外の記憶媒体からの消去だと通常より消える記憶の量も・・」


「出来るんだね、じゃー希望ちゃんやって」


「美由紀を置いて私だけなんて」


希望が大きな声で言うと疲れた声で美由紀が


「私だけでいいんだよ、何か腰の辺りまで痺れててもう感覚無いし」


言われた希望が下を見た時、美由紀の腰まで黒い何かに漬かっているのが見えた。


元々上しか見れない美由紀は希望の顔を見ると泣いていて「相当やばい」んだと確信した。


「お願い希望ちゃん、早くしないと2人とも」


希望は横に首を振りながら泣き声で


「そんな事出来ない、他に方法が・・」


美由紀は大きく息を吸って希望に怒鳴った。


「希望!ママの言う事を聞きなさい!未来の橋渡し的な存在の希望なんだから」


そして美由紀はうめさんの様に続けて言った。


「まったくあんたって娘は・・」


希望はそう言われ少しして「うん」とだけ答えた、返事が聞こえた美由紀はOKとばかりに。


「じゃ必要な分消しちゃって」そう言うと目の前がグラグラし始めた、船酔いの様な感覚に襲われ気づくと支えていた希望はいなくなり、そして今から何かに溺れる自分がそこにいた。


「だ、誰か助けて・・」と言い残し黒い何かに飲み込まれて行った。



美由紀は白い天上を見ながら目を覚ます。


「ここは何処?病院?私は何したんだっけ・・」


起き上がろうとしたが身体が痺れて殆ど動かなかった。


少しするとドアの開く音と声がした。


「美由紀やっと目を覚ましたね」


視界に入ってきたのは岸田うめであったが美由紀には誰だか分からなかった。


「あのーどちら様でしたっけ?」


「岸田うめを忘れたんかい?」


美由紀は記憶を辿ったが岸田うめと言う名前に心当たりが無かった。


困っている美由紀を見た岸田はため息をつきながら。


「希望の言う通り本当に消えちまったんか困ったのぉ」


「ごめんなさい、誰だか分からない」


美由紀はそう答えるしかなかった。


岸田と美由紀は少し会話をし、岸田は携帯を取り出し誰かに電話をかけ始めた。


「・・そうじゃ起きたんじゃがわしの事が分からんと言っておる・・・」


美由紀は岸田のやり取りを聞きながら自分の事を確認していた。


「私は西谷美由紀、高校生・・・」


そこから先の大事な記憶が思い出せない・・そうと考えていると。


「美由紀、ルナがおらんから普通に動ける様になるまでここで寝てるんじゃぞ」


岸田はそう言うと部屋を出て行ってしまった。


「ルナがいない?何それ・・」


身体が動く様になるまでの間にお見舞いと知人を名乗る人達が来たが美由紀は一人を除いて思い出せなかった。


記憶の片隅に残っていたビン底メガネをかけ少し小太りで、自分の命を助けてくれた法亢ほうがと名乗る青年だけは何故か覚えていた。



とある部屋に岸田うめと希望がいた。


「希望、それでどうなんじゃ?」


「私にも分かりません・・ただ分かってることは助けに戻った時には枯れたあれとそこに倒れてたルナのいない美由紀がいただけだったので」


「そうすると、お前さんが元の時間に転送した時に美由紀のジンも一緒に転送されて戻った先で1つになったと?まぁ同一のルナじゃからなぁ」


「私に無い美由紀の記憶があるので、そうとしか考えられません」


「それでルナがいなくなって魔力が無くなったお陰で美由紀は助かったと?」


「あの植物は魔力が無いと育たないと言っていたので・・」


「なるほど・・それで、これからどうするんじゃ?」


希望は少し考えてからこう言った。


「ルナを戻す事も難しいですし、刻まれた時を確認しながら私の元の時間に戻ります」


「そうか・・UDSとの争いも続くしお前さんがいると心強いんだが」


希望は「ごめんなさい」とだけ答えた。


「まぁーしょうがない、こちらの事はわしが何とかしておくから気をつけてな」


岸田が席を立ち部屋から出て行こうとした時に希望は最後にこう言った。


「うめさん・・ママとパパの事よろしくお願いします」


岸田は片手を上げてながら部屋を出て行った。



それから2年後、春の暖かい日差しの中「病気1つ無い」元気な女の子がこの世に誕生した。


「姫華じゃ駄目?可愛いと思うんだけど」


「だーめ、女の子なら名前はママが決めるって約束じゃない」


「で、何て名前にするの?」


「そうねパパとママの・・希望のぞみ


美由紀はふと出てきた名前を口にした。


「希望?何処かで聞いたことがあるような・・」


「パパ・・もしかして昔の彼女とかじゃ・・」


「パパの歴史に彼女はママだけだし、親戚にそんな名前の娘がいたような気がするが・・思い出せん」


「ママだけ」と言われた美由紀は耳を真赤にしながら、恥ずかしさを隠す為に娘をあやし始めた。



戦いはまだ続いていますが西谷美由紀の物語はこれで完結になります。


下手な文章で読みづらかったと思いますがここまで読んでいただいてありがとうございました。


またの機会があればよろしくお願いします。

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