第41話~最後の会話~

夕食を皆と済ませお休みを言いながら美由紀は自分の部屋に向かった。


美由紀は自分の部屋で最後になるだろうドッカの実を食べながら最後の決意をしていた。


「ごめん・・また変な事に付きあわせて・・」


美由紀は涙を浮かべながらそう言うと


「美由紀の意思なら・・美由紀が決めた事に従おう・・・」


ジンはそう言い返すとそれ以上は話さなかった。


美由紀は以前書いたトレートやギャラ達に宛てた最後の手紙をそっと机の上に置いて音のしない様に窓を開けて薄暗い外に出た。


美由紀は門ではなく外壁を風の魔法で飛び越え黒い天体の見える丘まで来た。


「これで最後にしよう・・ジン行くよ!」


そう言って覚醒しようとした時に後ろから美由紀を呼ぶ声がした。


「そこで何をしているのかな美由紀?」


美由紀が振り向くとそこにはトレートが顎を両手に乗せて伏せていた。


「トレート!?」


トレートは立ち上がりながら美由紀の方を見て。


「わしらに内緒で何処に行くのかな?」


トレートがそう言うとトレートの後ろの暗闇からギャラを含め次々と隊長クラスが現れる。


美由紀は声が出なかった。


何も言わない美由紀にギャラが空を見上げ。


「あの黒い天体が何か知らないが・・・まぁーいい物ではなさそうだな」


美由紀は何も言わなかった。


「あれはブラックホールと言って何でも吸い込んで破壊して・・・」


トレート達の横にすぅーっと現れたアリスが説明をし、そして最後にアリスがこう言う。


「そしてこの星に向かっていて美由紀がそれを止めようとしているの」


美由紀は涙を浮かべながら複雑な気持ちでアリスを睨みながら。


「アリス・・何で皆に?」


アリスは惚けた風に


「私は誰にも言ってないよ、皆が美由紀の部屋を出た気配を感じていたらしいし」


「我々はその手の感が強くてな」


そう言ったのはトレート


「さてと、帰って明日作戦会議でもしようか」


ギャラがそう言うと


美由紀は涙を流しながら黒い天体を指差しながら


「もう時間が無いの明日には星と星の引力関係が崩れて・・今からじゃないと間に合わない・・あれを何とかしないと皆が死んじゃう・・だから・・」


少し間をおいて更に


「無茶かもしれないけどこれしか皆を助ける手段が残っていないの」


ヒステリックにも似た声で美由紀は皆に言った。


初めて聞いた美由紀の声に皆は怯んだ。


美由紀はポケットから集めた黒霊石を取り出して


「これじゃ皆を助ける事が出来るかわからない・・でも何もしないで後悔したくないから」


そう言うと美由紀は覚醒した。


淡く光った中に漆黒の鎧を纏い白銀の髪の美由紀がいた。


「アリス、魔法をお願い」


アリスは魔法を唱えると美由紀の周りに水の膜の様な物が現れ包んだ。


「美由紀・・10分位だよ空気があるのは」


「計算が合っていれば10分あれば届く・・」


美由紀は涙を拭い今できる最高の笑顔を見せながら。


「みんな・・今までありがとう・・楽しかった」


涙目のまま美由紀は皆に背を向け最後に小さな声で


「さよなら」


そう言うと魔法と瞬間移動の魔法を組み合わせながら天体に向かって飛び上がった。


美由紀はあっという間にトレート達から見えなくなる距離まで飛んで行った。




「美由紀はせっかちなんだから」


ため息をつきながらトレートはそう言うとギャラの持っていた箱から特大の黒霊石を取り出し。


「行けるんだろうなアリス」


「トレートだけなら」


アリスはそう言うとトレートに「失礼」と言いながら跨り、長い呪文を詠唱し始め終わると同時にアリスとトレートは光に包まれてその場から消えていなくなった。


その場に残されたギャラ達の目に涙が溢れてきた。


ギャラがその涙を拭いながら震えた声で


「美由紀・・生きて戻って・・また・・」


涙が邪魔をしてそれ以上は声が出なかった。

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