第42話~最後の刻~

美由紀は黒い渦の正面に立っていた、正確に言うと上下左右の無い空間に浮いていた。


自分の魔法を魔具と黒霊石でどこまで大きくできるのか、はたしてこの黒い渦を消せるのか?


美由紀は大きく息を吸って大きく吐いた。


「やるよ」そう言った所で「待て美由紀」とルナ間通信が入ってきた。


美由紀の覆っている膜に合体する様にアリスとトレートが入ってきた。


「アリス、トレートまで」


「美由紀、ここまで来て帰れとは言わないよな、せっかく特大の黒霊石を持ってきたんだから」


トレートはそう言うと首に掛けたそれを見せた。


「アリスはこの計画を発案したし、ギャラに頼んで連合全員でありったけの黒霊石集めさせたし、美由紀だけの魔力じゃ足りなさそうだからトレート送るついでに魔力貸してあげようかと思っただけだから」


アリスが言い終わるとトレート共に覚醒をした。


美由紀はまた出てきた涙を拭いながら叫んだ。


「みんな・・みんなバカチンだよ」


「どういう意味だ?」とトレートが聞くと


「さぁね みんな大好きだよじゃない」と笑いながらアリスが答えた。


「なるほど、私も美由紀もアリスも大好きだ、そしてここに美由紀達が来てくれた事に感謝している。」


それを聞いて美由紀は頷き魔法の詠唱を始めた、それに同調するアリスとトレート。


黒霊石も全て粉々になり美由紀の体に吸い込まれて行った。


美由紀は魔法の拡大に合わせ制御もしなければならなかったが、あまりにも巨大な魔力に制御不能になりそうになっていた。


「暴走する!」美由紀がそう思った時、美由紀の意識に現れた。


「私はオーグ失われし魔具の意思を継ぐもの・・人間よ後悔は無いか?」


「後悔したくないからここまで来たんじゃない」


「よかろう、私が消滅した時に魔法を放つといい」


美由紀の意識が元に戻ったと同時に美由紀の魔具にひびが入り少しずつ消えて行った。


そして最後の一片が消えた時に魔法を放った。


一瞬だった、黒い天体の中心から光が走り跡形もなく消えてしまった。


「金と赤の魔具は黒の魔具の意思に従い元いた場所に・・」


数秒後そこにいた美由紀、アリス、トレートが同じ言葉を聞いて同時にブラックアウトし、その場から消えてしまった。




とある戦艦は船体の一部が消滅して航行不能になっていた。


「何が起きた」


「BHB消滅・・集結していた艦艇約3万・・一瞬で消えました」


オペレータからの答えに呆然とするαシャーク


「これではツール連合とやりあえんじゃないか全軍に撤退の指示を出せ」


BHBを連合にぶつけるつもりが・・SASかルナアースの新兵器か?


まさか美由紀がやったなんてこれっぽっちも思っていなかったαシャークだった。

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