第38話~懐かしい味~

一面に広がる紫の葉に黄色い実を付けた人工の畑の前に2人はいた。


「ここが美由紀のドッカの畑?」


アリスは美由紀専用と書かれた看板を見ながら言った。


「ここ食べれる物が少ないし、ドッカは1年中実が付くから助かるよ」


美由紀はそう言いながら畑からドッカを1つ取りアリスに渡し、渡されたアリスはドッカを食べてみた。


アリスが「桃?」と言うと美由紀は「でしょ」と笑顔で答えた。


そんな話をしていると2人前に片腕の無い熊が近づいて来た、アリスが身構えると美由紀が制しながら


「敵じゃない、畑の管理人のゲンさん」


「なんだ美由紀か、泥棒かと思ったよ、ん?もう一人いるかな?」


片腕の無い熊は周囲の匂いを嗅ぎながらそう言った。


思い出した様に美由紀はゲンにアリスを紹介してアリスに説明を始めた。


「ゲンさんは私が来る前に戦闘で負傷してしまって」


美由紀がそこまで言うとゲンが続けて話を始めた。


「負傷して方腕と視力を奪われ、魔具は持っているが戦力外扱いにされ、ここの居場所に困ってた所に美由紀が現れここの仕事を与えてくれた、美由紀には感謝している」


感謝と言われ美由紀は照れながら


「感謝なんていいよ、ゲンさんがいるから美由紀はいつも満腹で戦えるんだから、いないと困っちゃうよ」


ゲンは満腹と聞いて笑いながら


「美由紀が空腹に困らない様にこれから畑を耕すんだけど見ていくかい?」


そう言われた美由紀とアリスは付いて行きその後驚愕の事実を目にする事になった。


収穫が終わった畝の前までくると、ゲンは2人に離れる様に促し魔具で覚醒をして熊トラクタ化して畝を掘り返しあっという間に新しい畝を作ってしまった。


それを見た美由紀は「凄い」アリスは「何か間違ってる」と思った。


戻ってきたゲンが美由紀達に相談事があると話始めた。


「最近畑に小さい実を付ける雑草が異常に発生してて困ってるんだが何かいい案はないか?」


そう言われた2人はその雑草の場所まで案内してもらい確認すると、ドッカの実に蔓が巻きつきその先に3個の赤い実を付けていた。


「これが私のドッカに寄生して」


美由紀がそう言って蔓を外そうとした時にアリスが先に赤い実を取って匂いを嗅いで次の瞬間口に運んで食べてしまった。


「アリスそれはまだ・・」


美由紀がそこまで言ったところでアリスがニコッとしながら


「体に害があってもルナがいるし」


「そう言う問題じゃ・・」


アリスが美由紀を制し何か考えながら


「これコーヒーの生豆に似てる」


美由紀はコーヒーと言う懐かしい言葉を聞いて


「え、まじ、コーヒー?」そう言って赤い実を食べてみた。


「・・美味しくない・・てか始めて食べた」


美由紀がそう言うとアリスがアメリカでは生豆を普通に食べるんだよと教えてくれた。


そして2人のやり取りを聞いていたゲンが「コーヒーって何だ?」と聞くと美由紀が間違ったコーヒーの事を話し始めた。


「なるほど、徹夜で何かと戦う為に脳を覚醒させ、飲みすぎると寝れなくなりリラックスできる・・なんだか強くなれそうな飲み物なんだな」


美由紀の話をゲンなりに纏めるた結果だった。


「いや、違うから」


と話を聞いてたアリスが突っ込むと急に何か閃いた美由紀が。


「そうだ、この生豆を焙煎できないかな?コーヒー飲みたい」



その一言で「コーヒーが飲みたい大作戦」が始まり、アリスの知識とここにある物で焙煎してなんちゃってコーヒーが出来上がりその時の匂いでトレートを含め皆が集まってきた。


「それで鍋に出来たコーヒーをどうやって飲む?」


アリスがそう言うと美由紀が変な笑いを見せながら。


「ふふふ、そう思ってずーっと考えてた」


美由紀はそう言うとドヤ顔で皆に見える様に何かを差し出した。


「これが、本当の魔具カップ」


美由紀は爆笑の渦になり座布団何枚貰えるかと思っていたが。


「美由紀、マグカップってなんだ?」


と冷静にトレート。


「新しい武器か?」


と興味津々のギャラ。


「おバカ」


と呆れたアリス。


そして美由紀はここにはマグカップが存在しない事に「今」気づいたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る