第3話~止まる時~

土曜日の14時指定された施設に到着。


早速、アシスタント長谷川の指示でお手伝いを始める。


衣装に着替えながら長谷川が西谷に言った。


「15時から開演で終了は片付けもいれて18時だけど大丈夫かな?」


「はい、頑張ります」


面接の時とは違い、今日は頑張ります状態の西谷は笑顔で答える。


続けて長谷川が


「それと、公演中は袖から見学していいからね」


「わかりました」


小道具を抱えながら西谷が笑顔で答える。


それに応じて長谷川も笑顔で返す。



15時になりマジックショーが始まった。


荒井の次々とマジックが披露され観客からも大拍手が起こる。


特にトランプを使うマジックに西谷は魅了されていった。


袖からなら仕掛けが見えるかもと期待して来たが、仕掛けどころか何も無いところからフッと出てくる感じに見える。


「荒井さんって凄いかも」袖から見ていた西谷はそう思った。


そう思った時に荒井がこちらをチラッと見た気がして西谷は一瞬ドキッとした。


何だろうこの変な感じは、面接の日も見透かされたような事があったし、さっきも・・・


そう思った時に会場の照明が全部消えて荒井の声だけが会場に聞こえる。


「これからお見せするマジックは物を消すマジックになります」


真っ暗な会場から歓声と拍手が起こる。


続けて荒井がこう言った。


「動物を消すのは時代遅れ、今回は美少女も一緒に消して見せます。」


更に歓声と拍手が起こる。


美少女?そんな人居たかな?長谷川さんの事?美少女には程遠いし


西谷がそんな事を思っていると。


荒井がぷっと笑う声がマイクに拾われる。


そして笑いを堪えている様な声で


「では登場してもらいましょう」


その荒井の声と共に照明がいっせいに点く


ステージには大人が入れる箱とその横に西谷と床にブルドックがいた。


目の前の会場から歓声と拍手が起こった。


「え、何で、さっきまで袖にいたのに」


西谷は何がなんだかわからなくなっていた。


言葉も出ない、体も硬直している様で動かない。


混乱している西谷をよそ目に荒井がこう言った。


「では、準備をよろしく」


そう言うと長谷川が西谷に近づいてきて床のブルドックを両手で拾い上げ、西谷に抱える様に渡してきた。


ブルドックを西谷が抱えると横の箱の扉が自動扉の様に開いた。


扉が開き終わると長谷川が西谷を箱の中へ誘導する。


西谷は抵抗しようとするが体が自由に動かない。


何?何が起きているの?そう思いながら箱の中に入れられてしまう。


西谷が入り終わるとまた自動扉の様に扉が閉まっていく。


扉が完全に閉まって箱の中が完全に真っ暗な状態になる。


「出して、お願い」


西谷の悲痛な叫びが狭い暗闇に木霊する。



ふっと目が覚めた。


風邪かな?頭痛がする。


ここは・・私の部屋?


あれ?何処かに出掛けていた様な・・


何でここにいるのだろう?


時計を見ると土曜日の19時


変な夢を見た様な・・思い出せない。


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