第4話~動き出す刻~

薄暗い部屋の中、一人の男が立っている正面にはモニターらしき物が3つ並んでいる。


台座らしき物はなく宙に浮いている様に見える。



そのうちの1つが起動し画面が映り始める。


画面には「音声」と書かれている。


部屋にはスピーカーらしき物は見当たらないがどこからか男の声がする。


「新浜君 それで見つかったのかね」


「はい、ほぼ間違いないでしょう、私のコンタクトに抵抗しようとしましたので」


部屋の中にいた新浜と呼ばれた男がこう返す。


「それなら間違いないだろう、それで覚醒は何時頃になりそうかね」


モニター越しの男が嬉しそうに言ってくる。


「ただ今α《アルファ》シャークが接触をしておりますので、近いうちには」


そう新浜が答える。


「いい結果を期待している」


そう言うと起動していたモニターの画面が消えて元の状態にもどる。



数秒すると部屋の明かりが点き何も無かった空間にテーブルやら椅子などが現れる。


その1つの椅子に一人のメガネを掛けた女性が座っている。


戻って来た男を確認すると、嫌みっぽくこう言った。


「お帰りなさい、新浜所長 いや荒井さんって呼んだ方がいいのかしら」


荒井さんと呼ばれて男は苦笑いを浮かべながら


「長谷川君、その名前はもう終わりだ、それよりαシャークからの連絡は?」


長谷川と呼ばれた女はつまらないとばかりに低い声で


「コンタクトした時の後遺症かな?頭痛がするだけで、他には異常無しだそうよ」


それを聞いて新浜が眉間にしわを寄せながら。


「強すぎたかな?まぁいい何かあったら連絡をよこしてくれ」


そう言うとすっと姿が消えていく。


そう言われて長谷川は立ち上がり了解と言いながら部屋を出て行った。



日曜日、いつもの事だけど今朝もブルドックに起こされた、いつもの様に尻尾振っている。


西谷は眠い目を擦りながら


「ブルちゃんおはよう、お腹空いたかな?ちょっと待っていてね」


そう言うとベッドから降りてリビングへ向かう


ブルと呼ばれた犬も西谷の後を付いて行く。


餌をお皿にいれて床に置くと愛犬のブルはガツガツ食べ始めた。


それを見た西谷がニコニコしながら


「もう、ブルちゃんたらそんなに焦らなくても餌は逃げないから」


「ブルちゃんがご飯なら私もご飯食べようっと」


そう付け加えると、鼻歌を歌いながらキッチンへ向かう。


冷蔵庫を開け中身を確認しながら


「えーと何にしようかな?」


とその時、気を失う程の頭痛が西谷を襲いその場に倒れてしまう。


異常に気がついたブルが西谷に急いで近づくと。


何かに引っ張られた様に目を閉じたまま西谷が立ち上がる。


近づいたブルもそれ以上近づくのをやめ威嚇行動で吠える。


「そこにいるのはαシャークか?」


ブルの脳に直接響いてくる。


「私はαシャークだ、お前はジンなのか?」


ブルが言い返す。


会話と言うよりテレパシーの様なやり取りである。


ジンと呼ばれた者が


「あれから何年になる」


そう質問されたブルが


「あれから3年が過ぎた」


そう答えるとジンが


「回復に3年も要したか、その後皆は生存しているのか?」


「この3年で半数は戦死、残った半数で組織を構築し維持しています」


と答え、続けてブルが。


「ジン、戦線の復帰は可能か?」


少し間を置いてジンが答える


「この娘次第だな、記憶はDLしたから説得は私がしよう、記憶からパールの生存を確認した、後でパールをこちらへ寄越してくれ」


「了解した」


そう答えるとブルは扉を器用に開け部屋を後にした。


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