第2話~出会い~

私の名前は「西谷美由紀にしたにみゆき」先週までは普通の高校に通う普通の16歳。


今日からは普通じゃない16歳の高校生になりました。


面接会場の老人ホームに面接時間まで余裕をもって到着。


老人ホームの入り口には立看板があり、そこにはマジシャンの格好の男の写真と


「マジシャン荒井のマジックショー」と書いてあった。


近づいてみると、看板は手作りでトランプが舞っている背景に40歳位の男が笑顔で手を広げている物だった。


この人が荒井さんかな?もしかしてプロではない?大丈夫かな?


看板を見ながらそう思った直後に後ろから男のいじけた様な声がした。


「ちゃんとお金を貰っているし、一応プロだと思うよ、手作り看板だけど」


あわてて振り向くと、そこには看板の男が立っていた。


「あ、そんなつもりじゃ」


慌てて西谷が答える。


「気にしないでいいよ、見た目がそうだからしょうがない」


西谷は顔が真っ赤になって下を向いてしまった。


その様子を見たのか普通のしゃべり方で


「私は荒井一源あらいいちげん、貴方が面接に来た西谷美由紀さんかな?」


西谷は下を向いたまま小さな声で


「はい、面接に来た西谷です」


新井はやれやれしょうがないなと優しく声を掛ける


「ここじゃ何だし、中に行こうか」


と老人ホームへ歩き出す。


無言で西谷も荒井の後ろをついて歩き出す。



応接室に一人通され待つように言われた西谷は長椅子に座り心で叫んでいた。


「あーやってしまった、これじゃー落とされる」


少し時間を置いて両手に缶のお茶を持って荒井が入って来た。


「落ち着いたかな?」


と荒井が言うと


西谷はすっと立ち上がって学校で教わった頭を45度に下げて。


「先程はすいませんでした」


それを見た荒井がお茶をテーブルに置き椅子に腰を下ろしながら。


「まぁまぁ座ってください 面接はまだ始まってないので」


その一言で西谷は救われ、ようやく荒井の顔を見る事ができた。


「じゃー面接を始めようかな」


テーブルに置いた缶のお茶を開けながら終始笑顔な荒井が言った。


「はい、お願いします」


泣きそうな顔で返事をする西谷。


そして生涯最初で最後の面接が始まった。


面接の途中で長谷川と名乗る女性のアシスタントが加わったが、特に難しい質問も無く30分程度で結果「採用」で終わった。


場所も近いし仕事も難しくなくアシスタントの長谷川さんの手伝いで、ほぼ裏方業務だったので西谷も仕事を受けることにした。


面接が終わり自宅に着いて、ぐったり状態でソファーに横になっていると携帯に1通のメールが届いた。


送り主は荒井で来週の土曜日の15時からの公演に来てくれないかとの事。


学校も休みだし特に予定も無かったので、了解しましたとメールを送った。



この返信メールで西谷美由紀の普通の時が止まり普通の刻が動き出す事になる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る