第6話 代表者

「いないって、どう言うことだよ!?」


「鳥飼さん落ち着くっす! 喧嘩なんかしたら、どうなるか分かったもんじゃないっすよ!?」


真野が宥めながらも鳥飼が阿南に怒号を浴びせるが、全く動じてはいないようだった。


「本当のことを言ったまで。占い師以外に、それっぽい人はいない」


落ち着いた声で鳥飼に言い放つ。

鳥飼の阿南への憎悪は募るばかりだが、真野の言葉は的を射ている。

鳥飼は舌打ちをしてふんぞり返った。


「まぁ、阿南さんは分からないようだし、僕らでまた考えよう」


岩野が仕切ると、また会話は進んでいった。


「実際言うとこのゲーム、役職も人外がいるのかすら分からないから、少し吊るのが怖いんだ」


「確かに、平和村の可能性もなくはないっすからね」


「え、なにそれ?」


雨戸が平和村について疑問を浮かべた。


「人外が一人もいない村のことだよ」


平和村、「ワンナイト人狼」というものをやったことがあり、敦弥にもその知識はある。

人狼が一人も存在しない場合に発生し、村人陣営を殺してしまうと村人陣営の敗北となる。

それが起きると、俺達は一日で全滅してしまうことになる。


岩野が説明すると、俺が言った。


「俺たちが、あの仮面男の手の上で転がされてるってことか……」


「いや、流石にそれはないと思います」


大地が確信を持った声色で反論した。


「このゲームは一日に絶対に一人は殺さないといけない仕組み、なので、平和村の可能性はないと思います。それに、仮に平和村だったらクリア条件はどうなるんです?」


「……確かに、そうですね」


じゃあ、平和村の線はないな。


「……あのさ、執事くん」


岩野が突然執事に言った。


「……何でしょう」


執事は回転していた頭を岩野の前で止めた。


「代表の票数が皆一緒なら、どうなる?」


………!


皆は一斉に視線を執事へ集める。


そうだ。その方法なら、今日は誰も殺さないで済む!


そして返ってきた答えは、


「…その会議は終了し、代表もいないので、誰も死ぬことはありません」


「よっしゃ! これで死者は少しでも少なくなる筈っす!」


そう言って跳び跳ねたのは真野だ。

皆も、真野と同じ気持ちだった。


俺と”もう一人”を除いて……。


『では、投票タイムを始めます。手持ちのパッドから代表を選出してください』


「いいか皆! 右隣の人に投票してくれ! 右隣だぞ!」


岩野は皆に呼び掛けた。


皆は岩野の指示通りに代表を選んでいく。


そんな中、俺は……。


『…ピピッ、今選出が終わりました。代表者は……』


執事は、皆が驚くことを口にした。


『岩野様と景山様です』


皆は心臓の高鳴りを感じる。

そうして感じるのだろう。


この中に、本当に裏切り者がいるのだと。



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