第3話 Wolfs VS Hunters

俺は、館の中にあった300号室に足を踏み入れた。


「お邪魔しまーす……」


一応そうは言ってみるものの、中には誰もいないようだった。

辺りを見渡してみても何も怪しい物はなく、一般的なホテルのような内装だった。

机が一台、シングルベッドが一台。それ以外は何も存在せず、開閉不可な大きい窓があるだけ。

しかし不思議なのは、


あの男の正体については、深くは考えない。考える必要もないだろう。神、と名乗り、三百人の人間を集め、その力を見せつけ、狂気性を見せつけた。それも、人間を贄として。それだけで、奴の権力、能力、実行力の高さを示している。考えたところで、抗える相手ではないのだろう。


ベッドに座り込んで、そこにタブレットが置かれていることに気づく。

俺はそのタブレットを持ち上げる。


「なんだ? これ……」


俺は慎重にホームボタンを押す。

すると、画面に文字が浮かび上がった。


『Wolfs VS Hunters』


その文字が完全に浮かび上がると、ザザッという効果音を出して、赤い爪痕が斜めに表示された。


「うわっ!」


俺は突然の演出に驚かされ、タブレットを離してしまう。

危うく落下しそうになってしまうが、下がベッドだったので事なきを得た。

俺はタブレットを再度手に取る。


「あっぶねぇ……」


冷や汗を手で拭う。

本来なら、こんなことで驚いたりすることはない。だが、今は別だ。

あのステージでの出来事を見てからずっとこうだ。

あの有り得ない光景を目に焼き付けたのだ。無理も無いだろう。

まだ心臓が高鳴り続けている。

俺はこの状況に恐怖を感じているのか、はたまた高揚しているのか、それは自分自身でも分からない。


(いや、こんなことを考えるのはやめよう)


すると、タブレットの表記が変化した。

俺はタブレットに視線を集中する。


『 Wolfs VS Hunters


ルール説明

1.このゲームでは、人間陣営と、人外陣営に分かれてゲームをします。


2.人外陣営は、毎夜一人だけ人間陣営を殺害でき、人外陣営は人間陣営と同人数になれば勝利です。


3.全プレイヤーは毎日会議を開き、投票で代表を一人選んでそのプレイヤーが他のプレイヤーを殺害することが出来ます。人外陣営を全て殺害出来れば人間陣営の勝利です。投票権は拒否できません。


4.人間陣営には役職が存在し、それぞれ書かれている能力を毎夜使用できます。


5.毎日死亡する人数は二人までです。それ以上死人が出るとき、その人は死ぬことはありません。


6.ゲーム日数が10日を経過したとき、全プレイヤーは死にます。


では、エンジョイ ユアーライフ!』


「………これ、ぱっと見人狼だな。だけど……」


そう、これには所々違う点がある。

だが、そういった点を踏まえながら、あの仮面男の言っていたデスゲームに挑まなければならないのだ。


しかも、人狼というゲームは、必ず誰かが死ぬゲーム。全員生き残ることは不可能に近い。


すると、タブレットの表記がまた変化した。

そこからは、俺の役職らしきものが現れた。


「はぁ、これはまた難しそうだな……」


俺は頭を掻く。

まぁ、やるしかないのだろうけども。

取り敢えず、俺は明日の為に睡眠を取ることにし、ベッドで横になった。


これで、俺の退屈は終わるのだろうか……。



『コッケコッコー!』


朝になると、鶏の声が突然部屋の中に響き渡り、俺はすぐに体を起こして辺りを見渡した。

だが、それらしきものは見当たらない。

タブレットを見ると、アラームが設定されていたことが見て分かる。


「なんだ、ただのアラームか……」


俺はベッドから立ち上がると、洗面台に向かい歯磨きや顔を洗う。ここの設備は充実しており、大体の不自由はないようだ。

準備を済ませると、タブレットを持って部屋を出てみた。

すると、そこでは昨日の部屋前とは打って変わっており、一つの大きな円形の机に、中心には執事のような等身大人形が立っていた。そして周りには、八人が椅子に腰を下ろしている。

その内の一人と、俺は目が合った。

そいつは、昨日のトサカ頭のようだった。


「早く座れや! てめぇが座らねぇとことが進まねぇようだしよぉ」


トサカ頭はイライラしているのか、俺を睨み付けてそう言った。

俺はトサカ頭に苛立ちを覚えながら、空いていた椅子に腰を下ろした。

すると、執事の立っていた床がすっと抜け落ち、執事は頭だけ見えている状況になる。

すると、執事は回転し始めた。


『私は執事。このゲームを神様に任された担当者です。第一ゲーム「Wolfs VS Hunters」、これより開始します』

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