続きは向こうで・・・

勝利だギューちゃん

第1話


「久しぶりだね」

久しぶりに再会する少女だが・・・


「覚えていてくれたんだ。僕のこと・・・」

「そりゃあね。フフフ」

「何がおかしい?」

「すっかり、おじいさんだね」

「君は変わらないね」

「私は、とっくに死んでいるからね」

少女は笑う。


彼女は、60年前にクラスメイトだった女の子。

不慮の事故で、亡くなった。

葬儀には、大勢の人が参列した。


その日は、天も悲しんでいるのか・・・

大雨だったのを、覚えている。


「俺は、すっかり変わってしまったな」

「どうして?」

「君が言ったように、すっかりおじいさんだよ」

「見た目はね。でも、君は変わらないよ」


今は珍しくないが、当時は男子に対して、君と言う2人称を使う女の子は、少なかった。

今で言う、肉食系女子だったのだ。


「どこが、変わらない?」

「当時の夢を、相変わらず追いかけている。上から見ていて素敵だったよ」

「往生際が悪いだけだよ」

苦笑するしかなかった。


確かに追い続けた。

夢を追いかけるのは楽しいものだ。

結果は抜きにして・・・


でも、楽しい時間は、あっという間に過ぎる。

気がつけば、俺ももう・・・


「家族はいないよね」

「悪かったな。独身だよ」

「夢を優先したんだね」

「そんなに、かっこいい物ではない」


そう・・・

眼に入らなかった・・・


世間体を気にしてたら、何も出来ない。

なので、若いうちに捨てた・・・


「じゃあ、行こうか・・・」

「俺のお迎えは、君だったんだね」

「うん。もうみんなが待ってる」

「そっか・・・」

「歓迎の準備をしているよ」

「それは楽しみだ」


肉体は歳をとっても、精神は歳を取らない。

まさに、そうだ。


「君は切り替えが早いものね」

「俺は、テレビゲームか?」

「何それ?」

「向こうにもあるんだろ?」

「うん」

少女は即答する。


「夢は、捕まえられた?」

「上から見てたんだろ?その通りだよ」

「うん、おめでとう。も、変かな?」

「いや、ありがとう」


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