第6話 4月30日

 太陽の光が顔に当たった眩しさで目が覚めた。ソファでそのまま眠っていたらしい。横にはなぜかベットの上にいたはずの凛さんが眠っていた。

 「狭い……」

 私の毛布は半分以上凛さんに取られている。

 「凛さん、毛布返してください」

 ささやき声で控えめに訴えたが、凛さんは少し唸っただけで起きない。まぁいいか。私は頑張って毛布の端っこにくるまり目を閉じた。凛さんはすごく小さな寝息を立てていて、その呼吸がたまに私の首筋にかかった。なんだか変な気分だ。まだ出会ってほんの僅かの女の人の家に泊まるなんて。こんなことになるなんて思わなかった。ただの好奇心から始まったわりには、私は凛さんとの時間を愛しんでいる。

 「凛さんってば……講義遅れますよ」

 ちょっと強めに私が言うと、凛さんはゆっくりと目を開けた。

 「今日は講義は無いよ。丸一日お休み、なんでも好きなことができる」

 そうだった。今日は大学が休みなんだった。

 「ミノリ、海に行きましょう。平成の終わりに相応しいと思うの」

 「海って、結構遠いですよ」

 「そうだった。じゃあもう起きなきゃ」

 そういうと、凛さんはさっきまで眠っていたのが嘘みたいにすぐに立ち上がった。本当はこの人ずっと起きてたんじゃなかろうか。

 「何で行くんですか?」

 「車」

 「えっ、凛さん車持ってるんですか」

 「持ってまーす」

 家具は全然ないくせに。いやもしかしたら車を買ったせいで家具が揃えられていないのかもしれない。

 「今日はめちゃくちゃお洒落したいから、まず服を買いに行こう」

 「凛さんって結構女の子っぽいところあるんですね」

 「知らない私の一面が知れてうれしいでしょ?」

 「親友なのに知らないところがたくさんあってワクワクですね」

 半笑いで私が言うと、凛さんはとても嬉しそうな顔で笑うのだった。

 

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