鯉の恋 おばさんは禁句!結婚できないのは、鯉のせいでした。

風花猫

第1話

「誰だ、このおばさん。」


目の前の超美少年は、そうのたまった。


脳内で見ず知らずのお子様におばさん呼ばわりされる謂れはないと

言っていたつもりだったが口に出していたらしい。


「お子様呼ばわりするな!我はこう見えて100歳の少年だ!」


えーと、私より年上?少年?おじいさんじゃん!

てかあんた誰?


「われは、カープ王国の王太子カルプフェンだ。貴様こそ誰だ?

爺!なぜ麗しの姫君を連れてくるように言ったのに

なぜこのような、おばさんがここにいるのだ?」


おいおい麗しの姫君って厨ニ病か?


てかさぁ、おばさんおばさんて失礼すぎるだろう。

あんたよりも下だ、私は。年?女に年を聞くなよ!


死にたくなかったら女に年の事聞くんじゃない。

特に私のように微妙な年ごろの乙女に。


いや、噴き出すとは何事か!

乙女と言ったら乙女なんだよ。(死語だと、ほっとけ。)


そうか、死にたいか死にたいんだな、そこへ直れ!


「貴様こそ、我は王太子だというのに何という無礼な。

打ち首にされても文句は言えんぞ。」


打ち首にされて文句が言えるわけないだろ。

そんな喋る首があるなら、国宝級だ!


(ホラーだから、そんなもの見たくもないが。)


てかここはどこだ、なぜ私はここにいるのだ。

散々叫んだ私は、そこで眠ってしまったらしい。


ーーーーーーーー*-----------


それは、夕方のコーイチからの電話から始まった。

付き合い始めて3年。

それなりの年頃だから、私は結婚も視野に入れていた。

親や友人たちにも紹介済みで、

そのまま結婚するものだと周囲も思っていただろう。


「話がある。」

その一言にどれだけ舞い上がったか。

しかも、待ち合わせ場所は都内の超有名高級レストラン。

期待するなというのが、無理ではないか。


化粧を直し、コーイチが似合うといった

やわらかい春色のワンピースを直前に買い

タグを切ってもらう時間ももどかしく

待ち合わせ場所にいそいそと、

喜び勇んでいった私は、悪くないと思う。


だが、よくあるパターンだ。

待ち合わせ場所にいたのは、コーイチだけではなかった。

同じ色のゆったりめのワンピースを着た、

明らかに私より若い女がコーイチの隣にいたのだ。


コーイチは、その女の子と結婚するつもりで、

今妊娠〇ヶ月だと告げた。

そして別れてほしいと私に告げたのだ。


修羅場を期待した皆さん。


そんなもん目の前で妊娠した女見せられて

起こせるもんじゃないですよ。

お腹の子に、何かあったら責任取れないし。


だが彼女が、席を離れた瞬間に

コーイチはこう言ったのだ。


いやぁ、若くてかわいい子だろう、

お前だってそう思わないか?と。


その瞬間席を立ち、ボディブローを

ねじ込んだ。(加減はした。)


わざわざ高級レストランを選んだのは、

別れる女にもそれなりの礼儀だとでも思ったのか、コーイチ?


そんな気遣いいらねーよ。

余計な気遣いは更なる不幸をよんだ。

コーイチにとってだが。


3年付き合ってた証拠はあるし、ケーキやシャンパンが

慰謝料がわりになれば安いもんよね?


そう告げ、販売部門にコーイチを連れて行く。

さすが高級レストランで販売されているスイーツだ。

お値段もとーても良い値段だ。


ふふふ、だてに3年付き合ってない。

コーイチの冬のボーナスの金額を思い浮かべ

ケーキと酒を買いレストランを、後にしたのだ。



そうだ、思い出した、何度目だと言いながら

付き合ってくれた、友人のユーナに愚痴を言い

やけ酒とやけ食いをしたのだ。


途中ユーナには、付き合ってられんと見捨てられたが。


ーーーーー*--------------


そしてやさぐれるだけやさぐれて

気が付けば、おばさんと罵倒されて、だからここはどこだ?


うー頭痛い、飲みすぎた。


「目は覚めた~ごめんなさいね。

バカ息子が迷惑かけて。

これ飲んで気分が良くなるわよ~。」


うわぉぅ、美人、グラマラスボディ、エロい

ん?今息子といった?


「そうなのぉ。カルプフェンちゃんは、私の息子なのぉ。」


「母上、ちゃんはやめてください。

それよりおばさん、あんた何故ここに来た?」


またおばさん言いやがった、

だからおばさんではないと言っているだろう。


「そうよ、カルプフェン。おばさんは禁句だと、母も

(ボスッ!オウフ!)

あなたに言っているでしょう。」


お母さんのボディブローが効いているのだろう。

息も絶え絶えだ。


「は、は、は、う、え、し、しかし。」


「爺、説明しなさい。」


「お坊ちゃまが、一目ぼれして婚姻の契約印をその

お嬢様につけられたことが始まりです。」


婚姻の契約印?確かに結婚寸前までいったが

私は誰とも、婚姻を契約した覚えはない。

うっ、思い出したら泣けた来た。


「お嬢様が未だ婚姻できないのはお坊ちゃまが

すでにお付けになられた契約印の加護のせいなのです。」


なんですと、契約印の加護?

原因はお前か、そこのおじいさん!


「私は、知らんぞ。こんなおば(ウォ!)お嬢さんは。」


「カルプフェンちゃん。母は、以前言いましたよね。

契約印はよく考えてつけなさいと。

一時期、家出を繰り返し、人間界で遊んでばかりで、

母の言葉を蔑ないがしろにしてたんですね。」


「(オフッ)いえ、いえ、けっしてそのようなことは。」


「なら、なぜこのお嬢さんに契約印があるのです?」


「いやだから、知らんと。」


「爺?」


「はい、お嬢様は覚えておられないでしょうか?

子どものころ、池に落ちた子犬を助けられたことを。」


そういえばそんなことあったような。

そうだ、あの後足が赤くなっていて随分心配したっけ。


「その、赤くなったのが契約印です。

子犬を助けた時に、黄金色の鯉がそばを泳いで

いたのは覚えておられないでしょうか?」


鯉?あーなんか大きな鯉が

やたら纏まとわりついてきたような。


「そうです。それがお坊ちゃま、カルプフェン様なのです。」


「いや、だがしかしあの時の少女は、それはそれは見目麗しくだな、

こう楚々として清らかで一目で恋に落ちたのだ。

断じてこのおば、お嬢さんではない。」


どこの誰だ、そんな少女、わたしだよ!

爺の言ってることが正しいならわたしじゃないか。


「いや、なぜその時の女の子が

そこの、お、お嬢さんなら、なぜそこまで成長している。」


いや普通に、人間成長するよ。

年だって取るんだよ。


「カルプフェンちゃん、だから母の言葉は

しっかり聞きなさいと、何度も何度も(グエッ)

言ったでしょう。

人と鯉は、成長の速度が違うから

簡単に契約印を授けてはいけないと。」


「では、本当にあの時の見目麗しい少女が、、、、

嘘だぁ、なぁ嘘だと言ってくれぇ。」


おい、ずいぶん失礼な奴だな。

それより、契約印は消せるのか?


「あらぁ、言い忘れてたわねぇ。

大丈夫よ~お嬢さんがカルプフェンちゃんと

結婚する気もないみたいだし~

カルプフェンちゃんも現実を知ったようだし。」


うん、それは良かった。

で、方法は?


「うふふ、カルプフェンちゃんを、

思いっきり引っ叩いていいわよ~

迷惑かけたし思いっきりやっちゃって~。」


いや、思いっきりってあなたの息子なんですが

いいのか、それ。


「大丈夫~鯉族は、聖なる泉の水に入ると

すぐに回復するから、気にしなくていいわよ~」


そうですか、ではお言葉に甘えて

ん?そういえば元の世界に戻れるよね?


「それも大丈夫、カルプフェンちゃんが、行き来してたくらいだもの~」


戻れる、ふっふっふっ

これで心置きなく、今まで結婚できなかった恨みを込めて

はぁ~こぶしを握り締めて


せーの


ボグッ!


ーーーーーーー*-------


あれから一年、新しい彼氏はできたが

いまだ結婚はしていない。


そして今日は、


「あら~美紅みくちゃん来てくれたの~

さぁさぁ今日も飲みましょう。

カルプフェンちゃんと結婚してくれたら毎日飲めるのに。」


「いや、カルプママお断りします。」


「つれないわぁ~」


「何言ってるんですか、あなたの息子だって

姿さえ見せないじゃないですかぁ。」


そう、私は時折カルプフェンのお母さんと飲んでいる。

そして、カルプフェンは今度こそ鯉族の

お嫁さんを探すべくあちこち泳ぎまくっているという。


だけど、カルプママがいうには時折人間界に

こっそり抜け出しているらしい。


次の被害者が現れないことを望むのみだ。


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鯉の恋 おばさんは禁句!結婚できないのは、鯉のせいでした。 風花猫 @nii31ban

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