【短編】逆転コンビニ

宜野座

逆転コンビニ

 西暦20XX年、コンビニの店員と客の立場は逆転していた。客側が店員を接客、いや接店員する時代になったのだ。

 今、とあるコンビニに一人の青年が向かっている。彼の接店員の様子を見てみよう。ちなみに今後この青年を「ジョニー」と呼ぶことにする。

 まず入店。この時、客はレジの店員に「失礼します」と一礼する。ジョニーもレジにいる店員一人一人に45度のキレイな礼をした。いやはや、美しい礼だ。

 続いて商品選びに移る。ここは特に昔と変わった所はない。

 そして一通り目当ての品を選び終わり、ジョニーがレジへ向かう。さあ、ここからが接店員の本番だ。


「こんにちは! 商品をお渡しいたします!」

「あ、はい。ども」

「お手数ですがバーコードのスキャンをお願いいたします!」


 ここで大事なポイントがある。スキャンがしやすいように、客はバーコードを店員に向けた状態にして両手で商品を持つというのがマナーだ。

 そして一通りバーコードのスキャンを終え、会計へ。


「会計1万3200円です」

「お会計1万3200円ですね! お支払いさせて頂きます!」

「お願いします」


 ここでももちろん、お金は両手を使って丁寧に渡す。ジョニーは金額ちょうどの1万3200円を渡した。複数回チェックもしっかりしている。良い客である。


「レシートは?」

「いえ、必要ございません! 恐れ入りますが処分をお願いいたします!」


 軽く会釈をしつつ、笑顔は絶やさない。ジョニーはまさに模範的な客と言えよう。


「はい。どうぞ」


 店員が商品を袋に入れ、ジョニーへ差し出す。


「ありがとうございます! 頂戴いたします!」


 商品を受け取る際は両手で(以下略)。


「本日は誠にありがとうございました!」


 店員へ45度の礼をし、ジョニーはレジを後にした。そして店を出て立ち止まり、振り返って最後にもう一度レジの店員達へ軽く会釈をする。これが今のコンビニ、客が接店員をする時代なのだ。


 どうしてこうなった。

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【短編】逆転コンビニ 宜野座 @ginoza

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