島太郎 怒る
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翌朝、学校に到着した島太郎を待ち受けていたのは、悪意と憎悪に みちみちた生徒や教員たちの目でした。
島太郎の休学中に 何があったのでしょう。
自由な校風の学園風景は そこにはなく、ピリピリした緊張感が感じられます。
みんなが島太郎を避けているようです。
生徒も教員も。
人間嫌い、人間不信の島太郎にも、わずかばかり心を許すとまではいかないまでも、仲の良い友達がいます。
彼らが語る話は、島太郎にとって 驚くことばかりでした。
それは、学園の理事長だった母親が亡くなり、しばらくたった頃です。
母親の死に心打ちひしがれ、悲しみのどん底に身をおいていたあの頃、学園では、小学生から 大学生まで、全校児童、学生を集めた、全校特別集会が行われていたのでした。
その席上で、理事長が島太郎の母親から 父親に変わったことが発表されました。
これが、新理事長による学園の恐怖政治の始まりを宣言するものだったのです。
全校特別集会に引き続き、それぞれの学年ごとに さらに集会が行われました。
そこで発表されたのは、大幅な人事異動でした。
学級担任や学年主任の中で、自由を重んじる教員は追放され、生徒指導に熱心な教員が、他の学校から スカウトされてきました。
校則も厳しいものに 書き替えられました。
男女交際は一切禁止。
学園内では、学習に関すること以外は私語も禁止。楽しいはずの食事時間でさえ、ただ黙々と食事をしているだけです。
校則違反は、謹慎や退学処分になります。
さらに、そんな学園批判をすることも 即退学処分となるのです。
そして、あろうことか密告制度を奨励しました。校則違反や学園批判を している者を積極的に密告せよ、というものです。
学園内は、今や疑心暗鬼が 渦巻いています。
密告者には 金一封が支払られます。
嘘八百がまかり通る密告制度。そのために 多くの 生徒、学生が退学処分を受けました。
こんな暗黒政治がまかり通る学園に、嫌気をさして 自主退学をしようと退学届けを出す人も現れました。しかし、それは認められません。
転学や 将来の就職に不利になる、退学処分が下されるだけでした。
しばらくすると、退学届けを出す人はいなくなり、ただ 虫のように息をしているような生徒や 学生ばかりになってしまったのでした。
この話を聞いた島太郎の怒りは心頭に発しています。
……あのクソ親父が…… 母さんが愛していた この学園に何てことしてくれたんだ……
まさに 怒髪天を衝くとは、この事をいうのでしょう。
島太郎はこの時 決心しました。
父親に意見できるのは自分だけだと、理事長室に向かったのでした。
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