クリスマス前日SS(凛視点)

 困りました……。

 妙案が思いつきません。


 私は首を傾げ、鏡の前で服を当てては置き、そしてまた当てては置きを繰り返していました。


 色々と試してみたものの……。

 どこかしっくりこないのです。


 ですがわからないのは仕方ありません。

 こういう時にどうすれば喜んでもらえるか……。


 普通に料理をすればいいのか。

 ケーキを焼けばいいのか……。

 七面鳥を用意すればいいのか…………うーん。


 どれもダメです。


 何故ならケーキはよく焼きますし。

 七面鳥は二人で食べ切るのは困難でしょう。


 そうなると視覚的に楽しませるのが一番なのですけど……。


 悩みます。非常に悩みます。

 慣れていれば、こういう時のことをすぐに思いつくかもしれません。


 ですが、私は今まで家族としかクリスマスを過ごしたことがありません。



「詰みました。完璧な知識不足です……」



 私はため息をつき肩を落とします。



 やはり先駆者の……。

 ここは先輩に聞くしかないですね……うん。

 そうしましょう!


 私はスマホを取り出して電話をします。



『……凛、どうしたの?』

「すいません琴音ちゃん。今、少しだけいいですか?」

『……うん、まぁ』

「どうかしましたか?」

『……ううん。別に……何でもないよ』

「あ……」



 琴音ちゃんのやや歯切れの悪い返事……。

 私はその様子で察してしまいました。


 一昨日から学校は休み。

 つまりは、琴音ちゃんは加藤さんと大切な時間を過ごしているに違いありません……。


 恋人と二人で過ごす時間……。

 その時間と言えば——


“二人でクリスマスツリーを飾って、イルミネーションを楽しむこと”


 これしかないですよね!


 そこで飾りを取ろうとして手がぶつかったり……。

 ツリーの高いところに星を飾ろうとして、身体を支えてもらったり……。


 ふふっ、憧れのシチュエーションですね。

 手を繋いだり出来たら、もっと幸せです。


 うぅ、そんな時間の可能性が高いのに。

 そこまで考えが至らず……琴音ちゃん、ごめんなさい。



「ごめんなさい琴音ちゃん、すぐに切ります! 今、加藤さんと(二人の楽しい時間)ですよね!! そこまで考えが至りませんでした……」

『……ちょ、ちょっと待って凛! 違うから、まだそんな感じじゃ——』

「また掛け直しますね!」



 私は電話を切り、そのまま机に置きます。


 翔和くんのことになると周りが見えなくなってしまう。

 ……これは反省ですね。

 でも——



「そこまで夢中になってしまったのですから」



 待ち受け画面に映る彼の顔を見て、思わず笑ってしまいます。


 ふふっ。いけません。

 顔がだらしなく緩んでますね……。


 私は顔を両手で軽く叩き、再び鏡の前で服を選び始めます。

 さて、クリスマスどの格好で翔和くんに会いに行きましょうか?


 結局、私の服選びは夜中まで続きました。

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