一一七.遊星爆弾

 みんな大嫌い遊星爆弾について。


 あれ、作中の描写から、核兵器だと思っていました。

 が。


 なぜ遊星なんでしょうね?

 なぜ核兵器が小惑星じみた格好をしているのか。なぜ赤々と光を放っているのか。なぜ地球は防ぐことはできないのか。超大型ミサイルとどこがどう違うのか。なぜ放射能で海が干上がるのか(いやまあ、演出の意図としては科学的にどうこうではなく、核兵器の持つ狂気じみた力を具現化したもの、でしょうけれども)。色々と謎な兵器でございました。


 しかし、ガミラシウムという設定が出て来てから、ふと思いつきました。あれは狭義の核兵器ではなく、放射性物質を内部に仕込まれた小惑星。汚れた質量エネルギー兵器ではないのかと。

 さすればその放射性物質とは、波動エンジンに使用され、核崩壊によって他の放射性物質へと変化したガミラシウムでありましょう。

 その物質をカイパーベルトの小惑星に埋め込み、核崩壊で発生した熱が周囲の岩石を溶かし、あのように赤熱してガスを放出する物体として地球への落下コースを取らせます。

 内部がドロドロに溶けた小惑星は、その粘性によってミサイルやレーザー砲で砕く事は困難。あれがどのくらいの大きさかは不明ですが、戦艦を上回るほどの直径であれば、これが冥王星軌道から太陽の引力に惹かれて落下してくる場合、その軌道を変える事も、ヤマト以前の地球艦では容易ではないでしょう。

 またヤマトも迎撃を行わなかったところから見ると、ショックカノンでも粉砕は困難、波動砲での破壊も、あちらの数の前には効果薄と判断するでしょう。


 地球に落下した遊星爆弾は、運動エネルギーの解放による爆発と同時に、放射性物質を撒き散らかします。また森林や都市部に落下すれば一帯を炎上させ、大量の炭酸ガスを放出させます。

 沿岸部に落下した場合には大陸棚にダメージを与え、(もしまだ人類に使用し尽くされていないとすれば)メタンハイドレートを海水に触れされ、温室効果の極めて高いメタンガスを大気中に放出する事になります。

 爆撃が頻繁に行われるであろう初期には粉塵による寒冷化が起こりますが、爆撃が減少して来ると温暖化による気温上昇が始まるでしょう。それが一線を越えると、植物が枯死したり木の葉や枯れ木の腐敗が進んだりして、森自体が温暖化ガス排出源となる……まあ現在の地球温暖化のような、あるいはその先に予測されるような事態がさらに数倍以上の規模で起きるのです。


 そう、なぜ海が干上がるのかの答え、少なくともあり得る説明がこれです。つまり、放射能によってではなく、温室効果の暴走が原因だった訳です。

 藍藻などの植物を用いた地球に対するリ・テラフォーミングを行おうとしても、放射線レベルによってそれらの植物も生存不可能となって挫折した事でしょう。

 おお、結果的に時代性のある設定! というのであれば格好いいのですが、『俺ヤマト』妄想熱が十数年ぶりに再燃したのが2202の上映が始まった頃でしたので、これを思いついたものその後くらいだったと思います。

 当然時代に影響されたというか、時代が導いたというか。喜んでいい事、ではないのでしょうね。



(なお、本当に地球表面の生物資源を燃やし尽くしたりメタンハイドレートを解放すれば、金星のように温暖化が暴走するかは、確認したわけではありませんので、あしからず)

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