一〇五.豊田有恒『「宇宙戦艦ヤマト」の真実』

 ヤマトの企画チームメンバーであり、著名なSF作家でもある豊田有恒氏の著書です。その企画の始まりから、西崎義展という人との関わりを中心に記しております。

 その中では、西崎Pが人のアイディアを我が物にしていく様、報酬をけちる吝嗇ぶり、自分を良く見せる虚栄心、目下の者への横暴ぶりが描かれています。

 しかし同時に、作品を成功させるために金をかける事を惜しまない姿勢、今までにない作品を生み出すのだという意気も伝わってきて、その明暗両面のコントラストが強く印象に残ります。


 また、ヤマトに関するいくつかの謎が解けもしました。


 完結編のアイディア出しでクイーンについて、水のような透明不定形の生命体というアイディアを豊田氏が出したら先代に却下されたという話がありました。

 先代は、非人間型異星人が好きではなかったんですね。ドラマが作れないとか言って。

 おそらく、ガトランティスでサーベラーだけ肌が白かったり、デザリアムでサーダだけが灰色肌でもパンダ眼でもなかったのも先代の好みじゃなかったからでしょう(推測)。


 また、先代は最初、太陽系の惑星は直列に並んでいると思っていたそうです。まあ理科の教科書とかではそう描かれてますしねw だからヤマトでは、敵が順番に惑星を攻略していくんですね。

 第一作のヤマトも内側から順々に渡りながら冥王星に向かってますし。今ならPCで惑星の配置を再現できますが、第一作の中のあの頃、火星から木星は太陽を挟んでほぼ反対になるそうでw

 もちろん、その後で豊田氏が説明したでしょうし、その後も直線に並んでいるかのように描かれているのは、ドラマを作りやすいからでしょう。太平洋戦争における南太平洋における諸島の争奪戦、そのアナロジーとして。


 ただ、所々首をひねりたくなるような所がありまして。

 例えばヤマトのヒットの原因の一つとして、主題歌の素晴らしさを上げているのには同感するのですが、その主題歌のタイトルを『新たなる旅立ち』って書いてるのです。

 いや、『新たなる旅立ち』の主題歌『ヤマト!! 新たなる旅立ち』も名曲ですよ?! でもここで言っているのは、どうみても『宇宙戦艦ヤマト』の方でしょう。

 もしかしたらあの曲のタイトルが企画段階で『新たなる旅立ち』だったことがあるんでしょうか? どちらにしましても、編集さんがチェックしてほしかったところです。

 他にもちょっと? な所があったりしますが、興味がおありの方は是非(今更感)。

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