七十九.『さらば』とは何か再び(宇宙からのメッセージ(違))

 松本御大に限らず、戦争や終戦直後を知っている主要スタッフにとって。

 この時代の、比較的お気楽というか、陰りというものが姿を消しつつあった若者文化に、物の豊かさが当たり前となった時代の空気に、自分の楽しみを考えていればいいという常識に、それでいいのかという感情を抱かれたとしたら。

 現代(あの以下略……でもないか。いまでもそうかもしれません)の人々は、自分の楽しみだけに専念して、人の苦しみに無頓着、無視して生きていると思えたのだろうと、今は考えています。

 

 だからこそ、予想外の大ヒットをした1作目の後を受け、スタッフ達は考えたのでしょう。いまなら、現代の若者たちへのメッセージを込められる。届けられると。

 突き詰めれば、この作品のテーマは、2202で古代が言ったセリフ。

「助けを求められたら手を貸す。みんな当たり前のことでしょう?」

なのだと思います。

 それを、「君は愛する人のために死ねるか」としたのは、先代西崎Pの興行氏の勘というものでしょう。

 実際、『さらば』の興行成績は、製作者たちの願いとする所が総合的には当たったことを示しています。その年の邦画第二位ですからね。


 しかしそのストーリーから、第一作以上に「好戦アニメ」「特攻を美化」といった非難を浴びるようになります。私は、そして多くの第一作からのファンもそうだと思いますが、「ヤマトはそういう作品じゃないのに!」と歯噛みしつつ、「……多分」と目を逸らさざるを得なかったものです。

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