逃がしたサカナは大きかった!

Akulia

第1話 幼馴染みは原石だった。

「僕と結婚してくだしゃい!」

「嫌でしゅわ!」


顔を真っ赤にして、懸命に回らない舌で告白した少年…と言うかショタに対し、冷たく一刀両断する可愛らしい少女…と言うかロリ。


「わたくちは”れいじょういんざいばつ”の”ごれいじょう”でしゅわよ!おまえみたいな”こもの”なんか、相手しましぇんわ!」



☆☆☆


ガバッ!と飛び起きた”れいじょういんざいばつ”の”ごれいじょう”サマは、不機嫌そうに眉をひそめる。


「どうしたお嬢。例の”王子様”の夢でも見たか?」

「……」


男の言葉を聞くなり、”ごれいじょう”サマは露骨に固まったあと目を反らした。

これでは誰でも当たりだとわかるだろう。


「そう、ふてくされるなって。誰だって、まさかあの幼馴染みのはな垂れボーズがあんなイケメンになるなんて思わねぇよ。惜しくなったってしょうがないさ。それでこそ人間だ」

「うるさいですわね!誰も惜しいなんて思ってませんわーーっ!」


ヒステリックに叫ぶ彼女の声は、無駄に広い彼女の邸宅に、やまびこの要領で響き渡った。

まさに負け惜しみの見本のような声だったと、正直な使用人が後に語った。



☆☆☆


彼女は麗城院 美華という、名前からして”いかにも”な、お嬢だ。

麗城院財閥はよくある世界規模の財閥だし、麗城院家の資産は国の一つや二つ買えるような馬鹿げた金持ちだ。

おまけにありがちな感じに彼女の母は世界でも名の通る女優だったので、彼女自身はメチャクチャに美人だ。


だから、彼女は当然モテた。

幼い頃から父親を手玉にとり、祖父たちを魅了し、数々のオトコ(園児)たちと浮き名を流した。


そんな風に甘やかされて育った彼女は……ばかだった。

良く言ってばか。悪く言ってもばか。

父親の部下にすら、馬鹿可愛いと言われたことがあるらしい。

まぁこれはちょっと意味が違うかも知れないが。



とにかく、ちょっとおばかちゃんに育ってしまった彼女は、最高にモテてた幼稚園時代、天狗になってしまっていた。

だから、告られても断る。容赦なく断る。

断った幼馴染みが、数年後に化けるとも知らずに、ね。


「悔しくなんか、ないですわーっ!!」


遠吠えは、もはや屋敷の人間の目覚ましとなっていた。

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