第82話 粉塵爆発は威力が強すぎるよね
空中では既にペガサス騎士と羽アリ達が戦っている。
羽を落とされた羽アリが地上に落下してきて地上でまた我々を襲いに来る。
アリというが人間よりでかいアリだ・・・落ちる衝撃だけでも凄まじい、上空で消滅までしてほしい物だが・・・その余裕はなさそうだ。
ズキューン!
サモンが上空の羽アリを狙い撃ちしている、その頭上に落下する羽アリ・・・危ない!
風の魔法を咄嗟に放ち落下地点をずらす、 落下したアリはサモンに襲い掛かる、だが俺が既にその場所に行きアリを切りつけた。
「ひゃ~・・ありがとうございます金ちゃん・・」
避難地中心部まで飛んでくる羽アリはまだ少ないが、いかんせん数が多い、今までは西の方向のみであったが左右からも羽アリは現れている。
上空で羽を落とすと地面に落下する・・・危険だな
ミーア族は穴を掘ってそれをやり過ごそうとしている、穴・・・もしくは屋根が必要か・・・しかし3千もの避難民を収納する屋根など急ごしらえで出来る物でもない
とりあえず、ジュリやムュイが控える救護施設と地上から上空に攻撃する魔法隊やサモンの為の屋根は作ろう
土の魔法を駆使し、いくつかの屋根つきの施設を作った、強度を上げるための中からの補強は三つ目族に任せよう
俺が施設を作っている間も空から羽アリが落下し地上で戦闘が開始されている。
「父さん!アリの本隊が来る!」
とうとう来た・・羽アリだけでなく、通路からも大群が押し寄せる事態になった・・くそ!
パオーン!グチャ パオーン!グチャ
ガーナちゃんは巨大化し落ちてくる羽アリを鼻で掴み引きちぎる、落ちたアリを踏みつぶし消滅させる、頼もしいな
ワン!
「我も本来の姿になるワン!」
ポチ本来の姿、三頭の犬ケルベロス・・・しょうがないだろう
「いいぞポチ!アリどもをぶっ殺しちまえ」
ワン!
そういうとポチは禍々しいオーラを纏い本来のケルベロスに姿を変える・・
「ケ!ケルベロス様!」
なんと戦っていた三つ目族の救護班の者たちがひれ伏そうとする・・・そうか、ポチはエキドナの子、ゴルゴンではそれなりの知名度もあるのか、怖がられるよりかいいな。
「あ!ひれ伏してないで、けが人の治療行ってね」
「は!はい!」
片方ではブーさん師匠がばしばし落ちてきた羽アリを殴り殺している、シンシアは上空のオリオン族を支援する魔法攻撃を繰り返す。
中央部の落ちてくる羽アリ対策はシンシアに任せよう。
西通路に向かう
西の入り口は既に乱戦模様であった。
ハムラもトシイエもアリたちを切りまくる、その二人よりペースは低いがガクザン以下『金太郎丸』からの前線組もいい働きをしている
オリオン族も強い、しかしアリの数が多い、1時間2時間防ぐのではなく、夜が明けるまで攻防戦が続くのである、厳しいな。
壁上の俊太達も既に羽アリからの攻撃や地上のアリへの攻撃で一杯いっぱいだ・・・やはり羽アリが厄介なのだ
その中でケルベロスとなったポチは三つの頭から黒炎を吐きまくり次々とアリたちを葬り去る。
俺も剣を取りアリたちを切り刻む、頭の硬さは迷宮のアリの方が硬いだろう、厄介なのは数と羽アリ、羽アリだけでもなんとかできれば・・・
それに魔法組もこのペースじゃ魔力が持たないだろう・・・夜は長い・・・・
魔法収納の俺の武器庫をあさる、銃などで相手するには心もとない、貫通出来ても致命傷にならなければ魔物には効かないと同じである。
M2火炎放射器・・・これはいけそうだ・・魔力節約にもなる
第2次大戦でアメリカ軍が使用した兵器だ、穴などに隠れる日本兵への攻撃に使った兵器で、穴に隠れた日本兵にとっては恐怖の対象であった武器だ。
俺は早速『M2火炎放射器』をとりだし肩にかける・・重たいな・・
前線に赴きアリに向かって火炎放射をする。
火炎を放射するというよりはガソリンを放射して、それが引火する仕組みだ・・・・!
そうか・・・これか
火炎放射気を止めた、
「ハムラ、少し準備があるここを頼む」
収納魔法に収納されている小麦粉、砂糖、火薬もあるな
「シャル・・小麦粉とかおがくずとか集めるだけ集めてくれ」
「今ですか?そんな物を一体何に?」
「頼む、羽アリを一網打尽にする」
集められた小麦粉、オガクズもある、三つ目族の住居作成に使う為にあるらしい、壁を作る時に漆喰に混ぜると保温性が増すそうだ
「これから先、火の魔法は控えてくれ!ザナトラを呼んでくれ」
空の戦場からザナトラを呼ぶ
「どうしたんだツユキ?」
ザナトラは少し苛立ちながらやってきた
「これから羽アリを一網打尽にする」
「なに?そんな事が出来るのか?」
「ああ!上手くいけばな、準備が出来たら上空のペガサス騎士を地上に避難させてほしい」
「そんなことすれば上空が手薄になるぞ」
「直に終わる、それに避難所の上では行わない、ただ上空にいれば俺がこれから行う事に巻き込まれる恐れがある」
「分かった・・で合図は?」
「魔石を使った照明弾があるだろう、俺も持っているが俺のは火が使われる、その照明弾を一つ使わせてもらえるか?」
「かまわない」
ザナトラは魔道具の照明弾をよこしてきた
「よし!この粉を西側の通路に運んでくれ」
三つ目族たちが粉を運ぶ、俺も当然運ぶ
「こっから西側に火の魔法は使わないでくれ!」
壁上の魔法士、後方の魔法士に伝える
集められた粉を風の魔法で上空に舞いあげる、小麦粉、砂糖、火薬、オガクズ、M2火炎放射器の中のガソリンを霧状に上空に漂わせる。
濃度はかなりの物だ
「金ちゃん何しようっていうんだ?」
ハムラがアリを切りつけながら俺に叫ぶ
「合図したら伏せてくれ!壁上の連中もだ!」
「シャル!合図を出してくれ、いいころ合いだ」
「は!はい」
シャルロットが照明弾をあげる
「全騎避難所内の地上で戦え」
「お頭!まじっすか?」
「いいから早くしろ!」
******
「父さんが何かやるらしい!皆いったん壁を降りよう」
闇の魔法を放ちながらイロハが問う
「一体何を?小麦粉とか集めて・・・」
「とにかくここから避難しろって!イロハ!カエデ!急ごう」
******
「ちょっとペガサス降りてきちゃったじゃん・・・一杯羽アリいるのに!」
パオーン!ブーン!バシバシ
オリオンが下りた事で激しくなった地上と上空の闘いにガーナちゃんとブーさん師匠がフル稼働する
******
「きたぞ!左側にも」
「くそ羽アリも交じってる、一体何やるんだ、兄ぃが上空抑えなくちゃ・・・」
「文句ばっかりいってんな!男なら目の前の敵を粉砕しやがれ!ゲンプファー!」
「いわれなくてもやってやる!見てろミュイミュイ」
左側通路にもアリの攻撃が始まる
****
「オメエら!オリオンの強さをみせてやれ!」
レーベンブロイの掛け声と共に右の通路でも戦闘が始まる
****
「ほら!羽アリさん敵は隣の羽アリよ!」
後方の通路で上空に現れた羽アリに同志討ちをさせるシーナ
「一体金ちゃんは何をやるのかしら?」
*****
「キンタロウ様!皆の準備が出来ています」
ポチも敵地から避難所まで戻る、その体は無数の傷がある
「みんな伏せろ!」
M2火炎放射器に着火させ炎を上空に打ち上げる
地上の空気が上空に吸い上げられる
ド・・・・・・・・・ドガーーーーーーーン
巨大な爆音と共に静寂が周りを支配する
俺は爆発の瞬間、西側の味方を守る為に結界を張る
空気中を舞っていた、小麦粉、砂糖。オガクズ、火薬、霧状のガソリン
そのすべてが粉塵爆発を起こした
空気中にいた羽アリ達は、その場で消滅し光となって消えたアリ、吹っ飛んだアリの破片により自らの羽が損傷して地上に落ちるアリ、爆風によりる地上に叩きつけられるアリ。
アリの破片は避難所も襲う!土で作った壁に無数に突きささるアリの破片、しかし完全魔物なのでそれらは光りとなり消滅する、しかし・・威力が強すぎた・・・・壁の一部は壊れてしまった、掘った堀も砂塵により幾分か埋まってしまった
しかし上空に羽アリの姿は僅かとなった
「な!なんじゃこりゃ!」
ザナトラは叫ぶ・・・
「羽アリ達が殆どいなくなっちまった!」
ペガサス騎士達は唖然とする・・・
「おい!お前ら!ボーっとしてんな!まだいるだろ!」
シンシアがペガサス騎士に叫ぶ
吹き飛ばされた羽アリが何匹か避難所内に落下している、
中にはそれにより押しつぶされた三つ目族もいる!
「ああ!ペガサス騎士!飛びあがれ!残った羽ありと避難所内の羽アリを駆逐しろ!」
ペガサス騎士はそれぞれ飛び立つ
基地内の飛ばされた羽アリは、既に弱っていた、三つ目族の義勇兵でも簡単に駆除できた
しかし、羽アリの破片などで怪我をしたり、中には死んでしまった者もいる、救護所には怪我人があふれる
威力が強すぎたのである・・・
だがそれを悲しむ時間はない、地上には無数のグラップラーアントがいるのである。
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