第83話 ライバルはお互いを高め合うよね

グラップラーアント達は数の暴力による攻撃をしてくる。


ただ、上からの脅威が無くなった事は大きく、逆にペガサス騎士が制空権を取った事は大きい。


ただし西側の壁の前面に作った炎の防衛線は爆風により消え去り、水堀も機能しなくなっている、西通路に関しては全面的にアリの侵攻が始まろうとしている。


「ダメだ!壁は危なすぎる無数に登ってくる」


壁上に再び向かおうとして俊太は壁登る判断をあきらめる


「左の壁から登ってそっちから対処しましょう」

カエデは提案する


「でも、壁から侵攻するアリをなんとかしないと・・」


「壁から左側にいくアリも何とかしないとです・・・・出ないと左側の守りが危険です・・・」


左壁を守っていたのは三つ目族数十名のみ、やや防御力に劣る、左側には炎の防衛線が残っているが、西側からのアリの侵攻が始まった為、左の壁も危険になってきているのである。


「西側から来るアリは私達が片付けるよ!」


シンシアがガーナちゃんに乗って登場する

パオーン!


グチャ!


ドシン!ドシン!


ガーナちゃんは巨大化しアリ達を踏みつぶす。


バシン!バキ!ドカ!


ブーさん師匠がアリを殴り殺す、無表情のその殺戮マシーンは恐ろしくもある・・


「シンシア!師匠!ガーナちゃん!」

俊太は歓喜の顔を見せる


「私だって魔法で攻撃しちゃうんだからね!」


シンシアが光の魔法を空に放つ、その光は空中で分裂し『光の流星弾』となりアリの群れに着弾する。


「すごい・・いつの間に・・シンシアちゃん・・」


カエデが驚いた・・・


「シンシア!いきなり大技すぎるわよ!貴方は配分を考えないから、すぐ大技使いたがる」


「煩いぞ!イロハ!技というのは使ったもん勝ちだ!使わないで闘いが終わっても知らないからな!」


「も~!貴方は何回かそれで迷宮で危険な目にあってるでしょ!私もここで戦うから!」


イロハとシンシアの言い合いが始まった

言い合いをしながら二人は目の前のアリを始末していく。


「シュン!私以上に配分を知らないのが左にいる・・・そっちを助けてやってあげて!」


「分かった!」


「カエデ!シュンタ様をよろしくね!」


「イロハ様!この命に代えてでも!」



******


「へ!スゲー魔法だったな!空からの脅威が消えただけで俺は無双だ!」


左通路ではゲンプファーが切り込む


「おい!あまり前に出るな!しょうがねえな!」


ミュイミュイは魔力を大きく上げながら目が赤くなる。


その瞬間から左通路から侵入してくるアリは前の方から石化し砂と消え、光となって消えていく。


「スゲーな・・ミュイミュイ・・・そこまで石化が強いメデューサなんて皆た事無いぞ」


「俺は特別なんだよ!」


*「壁の上が押されている、西側の壁から大量のアリが来ている!」


「クソ!さっきの爆発で西の壁かおかしくなってるみたいだ」


西側から壁を伝い大量のグラップラーアントが這い寄せてくる。


壁の方を見ると壁下から壁上から来るアリ達に噛み殺される三つ目族義勇兵が目に映る


「くそ!オリオン兵の何人かで壁上を守れ!」


「俺達も行くぞ!ゲンプファー」


「お前は!タラシやろう!・・・くそ!頼む」


俊太が左壁を登りオリオン族と共にアリ達を切り刻む先頭に立った俊太は炎の魔法を壁上から放った


「なんだ!あの炎のでかさは・・・こりゃ俺も負けるわけだ・・」


ゲンプファーはその炎の大きさに驚愕しながらも目の前のアリを殴り殺す。


壁前のアリの群れから爆破が起きる


「これがグラスのホウラクです!『シュリュウダン』っていうのですよ!」


カエデが手榴弾のピンを抜いて投げつける、収納魔法を使えるカエデは多くの武器を隠し持つ。


ゲンプァーの横を火球が駆け巡る


西側から一緒に左の支援に来た『金太郎丸』のドランだ


「あっしもこっちの支援に来ましたんでね!あまり前には出ないで下さいよ!オリオンの若者」


「すまねえ!助かる」


*************


「くそ!切りがねえ!」


レーベンブロイは右側の通路を守る、


「どなくそ!おら!」

ブロイベルグもその怪力でアリ達を粉砕する


*「バイシュタンがやられたクソ!」


一人また一人と屈強なオリオン兵がやられていく


バゴーン!


グラップラーアントの顔を潰れる・・一人の鬼人が現れたのである


「怪我人はいませんか?私が治療します!」


ユキナリとムュイが左の支援に来た


「鬼人か・・・ハムラではないのか・・大丈夫か?」


ハムラと戦った事のあるブロイベルグはハムラの能力は分かっていたが、ユキナリの能力は分からなかった、鬼人はゴルゴンにもよく来る種族で、その戦力はブロイベルグも分かっている。

鬼人は確かに強いが、オリオンの精鋭と比べればむしろオリオンの方が強い・・・ただハムラは別格だったのでブロイベルグはユキナリを心配したのである。


しかし赤く紅潮したユキナリの体はグラップラーアントの攻撃を喰らっても傷一つ付かない、鬼人の上位者にしか伴わない鋼の肉体の持ち主だった。


ユキナリは無言でグラップラーアントを金棒で殴り殺す!


また怪我をしたオリオン兵もムュイの水の治癒により治療されていく


ジュリとムュイ リザードの彼女達は水の魔法が強いのは承知だが、ジュリは水の攻撃の方が強いのに対し、ムュイは治癒魔法が強い

両者ともに癒しの水を作るほどの力を持つが、特にムュイの治癒術は高い。


左側に怪我人や犠牲者が増えていたので西側からユキナリ、治癒としてムュイが派遣されたのである。


「なんだよ・・グラスの鬼人は・・みんなこんなに強いのか?」


ユキナリの戦い方を見ながらブロイベルグは呟いた


「若い鬼人!感謝する!オリオン兵達!気合を入れろ!ゴルゴンの兵が弱くない事を客人たちにも見せつけろ」

レーベンブロイの掛け声と共に左側も気合が乗った。


**********************


「あら!とうとうこっちにも来たわね、ふふふ」



後方の通路にもアリが押し寄せてくる・・・シーナペインは微笑むが、一緒に守る三つ目族の義勇兵はこの避難所がアリによって囲まれ逃げる手段が無くなった事を実感する。


「金ちゃんにアリの習性を教えてもらってね・・・操らなくてもある事をすると、面白い事になるって聞いたのよ、為してア・ゲ・ル」


シーナは先頭から来るアリに魔力を込める


先頭から来るアリ達は動きが変わった、後ろから来るアリを噛みだす、しかし後ろから来るアリは先頭のアリには無抵抗である


先頭のアリ10匹位が他のアリ達を攻撃し始めたのである


「あら?本当に効くんだ!すごい、臭覚を奪っただけなのに」


先頭集団のアリは匂いが無くなった事により敵味方が分からなくなる、動くものは皆敵な状態になった、一方で後ろのアリは攻撃してくる先頭のアリも仲間なので攻撃をしない。


そのアリの混乱の和は広がっていく、やがてその混乱は臭覚を奪われていないアリにも伝染する後方のアリ達に混乱が生じたのである


「あん!一人やられちゃった!もう!」


しかし混乱の輪はアリ達にとってはごく一部である、混乱するアリは皆殺すという命令に変わったアリによってアリに秩序がもどる


「うーんすぐに戻っちゃったわね・・」


とわいえ、操るより臭覚を奪うだけという方法は、魔力の消費が少なく済むので新たに来るアリ達の収穫を奪い同志討ちさせる方法はとても有効であった。


「魔女様・・・すごい・・・」


一緒に守る三つ目族はシーナを称えた


*****************



「おい、オワリの鬼坊主!左の通路が厳しそうだ!そっちに助太刀しろ!」


ハムラはバッタバッタとアリをぶった切りながらも冷静に戦況を見ている


「・・・・」


ユキナリは無言でうなずき走る


「シャル!救護班から左側に治療隊を送ってくれ」


「はい!」


シャルロットも走る


俺もアリを切り付けながら土の魔法で大きな岩石を作りアリの大群に落とした


ポチは相変わらずアリのど真ん中で暴れまわる


西側の右側 オリオンが守る所もザナトラのペガサス騎士の空からの支援が加わり戦況が回復している


こわれた壁の方から『光の流星弾』がアリ達に降り注ぐ。


「おっと・・こりゃシンシアか・・・練習してたからな・・・」

でも大技だ!かなりの魔力を使う・・・配分はしっかりしろよ・・夜は長いからな


そうしてしばらくしたら今度は闇の重力衝撃グラヴィティインパクトこれはイロハちゃんか・・・これも大技だ

アリ達はその黒い塊に吸い寄せられひと塊りとなり、光へと消えて行った


なんだかんだイロハとシンシアはいいライバルである・・・

共に競い合う、イロハちゃんが我が家に来てからシンシアの魔法練習に対する意気込みが変わった




「おい金ちゃん!ポチが二人いるぞ?」


確かにアリ群れのど真ん中で暴れるポチの側にもう一人ポチがいる・・・いやポチに似ている何かがいる・・


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