第80話 仲間が集結すれば怖いものなしだよね

「ママ~みんなで何処に行くの?お家に帰りたい」


三つ目族の少女は荷車に乗りながら母親に話しかける。


「アキちゃん・・少し我慢してね」

母親は子供の手を握り締め、荷車を引く牛を誘導する。


クスマ村の人口は1000人程、馬も数頭いるが数が少ない、荷車を引くのは家畜の牛になる。

どうしても移動速度が遅い。



「くそ~命がかかっているのに、みんな荷物が多すぎるんだよ」

ゲンプファーは呟く


「グラップラーアントは根こそぎ喰い尽くす、少しでも荷物を持っていきたいというのは仕方がない事だ」

ザナトラが答える


現在クスマの民を護衛するペガサス騎兵は400ほど、大地を埋め尽くすほど発生するグラップラーアントを対処するには頼りない数である。


その時アマツの村からレーベンブローがペガサス騎兵200騎程連れて合流した。


「どうであったアマツは」


「残念だが・・生存者は確認できなかった・・・」


「そうか・・・・」


アマツは三つ目族最大の村で3000人規模の住人がいた、武器を持った兵もそれなりに配備されていた村で、その村の全滅の知らせはこれから起こるであろう危機を物語る。


その後も10人規模のペガサス騎兵が報告に戻ってくる。


「エダンの集落・・誰もいませんでした・・肉塊や血痕が多数確認できました・・全滅した模様です」


***


「ハダンの村・・・全滅でした」



「シノンの村・・ひどい有様でした・・」



来る報告は村が全滅した話ばかりである


クスマ村以西の村は無事の報告があり、この避難の列を目指し避難中


その護衛に300ほどのペガサス騎兵が飛び立つ



「このあたりで野営になるな・・・各地の騎兵にこの場所を知らせろ、防衛陣地をこしらえるぞ、」



「クスマの者も手伝います」

クスマの代表 クシンが答えた


「ありがたい・・オリオンは土の属性が強い者が少ない、頼む」


「我等も種族の存続がかかっています、命がけで手伝います」


クスマの民は子供に至るまでその設営を手伝う、途中エデン村200人 カサ集落60人 プシの村100人の三つ目族の一団が加わる



「俊太俺達も手伝うぞ!」


「うん!」


俊太と俺も土の魔法を使えるので防衛陣地作りを手伝う、ハムラやトシイエもその怪力で陣地作りを手伝う


「凄いな・・この土壁・・・城壁並じゃないか・・」

ザナトラはキンタロウが作った土壁を見て感心した、グラスには鉱山がある、鉱山から出現する魔物を閉じ込めるには強力な壁が必要だ、今まで何度も行った壁作りの土魔法、かなり熟練されている。


避難民は次々と加わる、その数は2000人を超えた、荒野に住む種族だけに避難民で結成された兵は屈強だ。しかしそれでも数は少ないだろう、応援を頼むか・・・


「ザナトラ・・・グラスの応援を呼んでも問題ないか?」


「グラスから?これるならありがてえけど、どうやって?」


「エビスの沖合に停泊する船に護衛用の海軍が50人、グラスからも何人か呼びたい、いわば軍隊だ・・この地に呼んで良ければ呼ぶが」


「かまわんだろう・・・今は数千年に一度の危機だ・・・事後報告になるが俺が責任をもつ、しかしどうやって?」


「まあ、待っててくれ」


俺はチュウ吉呼び出しを行う


「呼ばれたっチュウ!」


すぐさまチュウ吉が現れた


「チュウ吉よく来てくれたな、まず『金太郎丸』に行かせてくれ」


「分かったっチュウ!」


俺とチュウ吉は『金太郎丸』に移動する


突然現れた俺に『金太郎丸』は騒然としてしまった


元鉱山衆である、船の護衛兵を集めた


「チュウ吉、この人たちを、さっきの場所に行かせたいが」


「全員!チュウ?・・・全員は無理っチュウ・・・みんな能力が高いので・・10人が限度でチュウ・・」


えええええ・・・そうなの・・・・グラスから500人くらい連れてこようと思ったのに・・・


「じゃ・・じゃあガクザンと・・ヘルア、キンビ・ドラン・エジ・・この5人で」


「分かったチュウ」


俺と5人とチュウ吉は再び避難地に戻る



その行為をザナトラは唖然と見ていた


「な!いなくなったと思ったら・・新たな人物を連れてきた・・・転送魔法か・・そんな魔法使えるなんて・・」


「すまない・・軍隊を連れてこようと思ったが・・・数に限度があった、ガクザンはドワーフで土魔法も強い、ヘルア・キンビは剣士だ剣技はグラスでも上位だ、ドランは火の魔法が強い、エジは癒しの水を作れる治癒士だ」


「チュウ吉・・今度はグラスの家だ」


「鼠使いが荒いッチュウ!」


------------------

ジーフは学校の仕事を終えてイロハと共に帰宅した


「ただいまです・・ああメグミ~ただいま」


「おかえりなしゃい・・ママとイロハ」


「はい!メグミちゃんただいま!」


外ではシンシアがヤギの世話をしている


その時!


「やってきたっチュウ!」


チュウ吉と共に俺が現れた・・


「きゃ!き!金ちゃん!」


ジェニファーが驚く


「驚かしてすまない・・応援が必要で来た・・・」


「また危ない事ですか!」


ジェニファーが詰め寄る


「うん・・・まあそのな・・・」


「も~・・・・」


「キンタロウさん?私はいつでもいいですよ!」


「いや!ジーフ・・ありがたいがシーナもいるしメグミがかわいそうだ・・ポチ!」



ワン!


「一緒にゴルゴンに来てくれ!」


ワン!?


クーン!


「エ・・エキドナに会いたくないワン・・・」


「そうも言ってられなくてな・・・頼むポチ」


「主が言うなら行くワン・・・でもエキドナに会いたくないワン・・・」


初めからポチを連れていけばよかったのである・・・・それくらいにポチは強いしな・・・


「私も行きます!危険という事はシュンタ様も危険という事でしょう?それにカエデと兄さんもいますし」


「いいのか?危険だぞ!」


「まった~!私も行くよ!家が騒がしいと思ったらこれだ!私もゴルゴンには行きたかったんだ!」

ヤギの世話を手伝わされていたユキナリもいた


ユキナリも金棒を手に取り参加の意思を示す


「よし!ではポチ・・イロハ・シンシア・ユキナリ・・」


パオーン!


シンシアの胸のポケットから吠えるガーナちゃん


「ガーナちゃんか!心強いな」


それにシンシアにはブーさん師匠も付いてくる、正直いうとシンシア以上にこのガーナとブーさん師匠はありがたい


「う!吾輩の魔力危機ッチュウ・・これじゃあ吾輩が帰る力が無くなるッチュウ」


「なにチュウ吉、帰らなければいい訳だ」


「チュウ!?・・・主のいう事は逆らえないチュウ・・・」


チュウ吉は再び穴を掘り避難所につなぐ


「来たっチュウ」


「ワン!」


「シュンタ!ちょっとカエデとくっつきすぎ!」


「あら、カエデ、シュンタ様と仲がいいようで」


「・・・・・・」



カエデと俊太は棒立ちで転送の穴をみる


「イロハにシンシア?ユキナリも・・」


「いいいい・イロハ様・・・・これはその・・連携・・でしてその」


「おお!オワリの鬼坊主!頼りにしてるぜ!」

ハムラがユキナリの頭を叩く


「なんだい!イロハか・・・俺としてはノームの女戦士辺りを希望していたがなあ・・」

トシイエが呟く


「わあポチちゃんだあ」

ジュリとムュイはポチを撫でる


「もう駄目っチュウ・・・みんな魔力が高すぎっチュウ・・・吾輩は眠るッチュウ・・・」


チュウ吉は寝てしまった・・・


すまなかったなチュウ吉・・しかし戦力は大幅にアップした


「あら?ジーフは来なかったの?」


シーナさんが俺に尋ねた


「ジーフはメグミもいますし、今回はお休みさせました」


「そぅ・・久しぶりに二人で暴れてみたかったけどねえ残念」


もうすぐ夜が来る


俺に出来る事は今はこれくらいかな・・・・



----------------

「なあ!私達!のけ者にされた気がしないか?」


「あん?何言ってんだ?それよりさ美味い店が新しく出来たんだ、明日イロハとシンシア誘って行こうぜ」


二人でルームシュアする、ラミーとレミーはいつもの会話をしていた。



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