第79話 アリなんかに負けない強い心を持った仲間だよね

暗闇の中 赤く光る無数の目が大地にひしめく


グラップラーアント 名前の通りアリの魔物だ

迷宮のファイアーアントと違う点はこのアリは毒を持たない、その分戦いやすいのかもしれないが、その体は鋼鉄のように固く動きも早い、統率も取れていて力も強い、そして数が異常に多いのである。


「ああ!来た・・・ユミ・・・お姉ちゃんが守るからね・・」

ルミはユミを抱きしめる、守るといっても何もできない。


しかし、

ルミは我が目を疑った、固い体のグラップラーアントを次々と真っ二つに切る鬼、鬼の体は赤く染まり、グラップラーアントの攻撃を跳ね返す、裸同然の格好でいながら傷一つ追わない鬼が目に映る。


鬼だけではない、華奢な体に見えて華麗に動き、風を起こしてグラップラーアントの節を切り動けなくする女性


さらに長い片刃の湾曲する剣を持ち、次々と笑いながらグラップラーアントを切り殺す男


グラップラーアントを操るように同士討ちさせ、混乱することないはずのグラップラーアントが混乱する事態を引き起こしている美しい女性


極めつけは、土の魔法で多くのグラップラーアントを閉じ込め中で大爆発を起こし、一度に多くのグラップラーアントを葬り去る男、その男は残ったグラップラーアントも剣技で切りつける。


「なんじゃあ、ありゃ・・お!きたか!ふん!」

前線の戦いの中をすり抜けてきたグラップラーアントがケンタウロスにより葬り去られた。


「カエデそっち頼む」


「まかせて!」


俊太はすり抜けてきたグラップラーアントに対局し光の魔法剣を使いその一匹を葬り去る


カエデもグラップラーアントの頭の節を攻撃しその頭を切り落とした、しかしグラップラーアントは頭を切り落としても襲ってくる


「く!」


カエデは構えるがグラップラーアントは石となりやがて崩れ落ちた


「油断するな!カエデ」


「ありがとミュイミュイ」


「水の精霊ウンディーネ、我らリザードにその加護を与えたまえ」

ジュリとムュイは空気中の水を集め氷の刃を作り


それを集団で向かってくるグラップラーアントに向けて落とし始めた

「全然効かない・・・」


「まだまだ、これも喰らいなさい」


ジュリが地面から多くの氷の剣山を作り出した、それはグラップラーアントの柔らかい腹に突き刺さった、それでも死なないグラップラーアントだったが


ズキューン!


「動きが遅いから狙いやすいです・・ありがたい」

まだ生産数は数個しかないグラスの軍事兵器 ドラグノフ型狙撃銃


しかも弾頭は魔法が込められている魔石を使っている、無機質の弾頭と違い、回復力の高い魔物も致死性のダメージを与えられるグラス軍の武器である。


サモンが使節団に選ばれた理由の一つが銃の扱いが上手いからである。市の重役であり、研究所にも顔が利き武器の開発にも携わってきた男がサモンである、ただのエロい市長の息子ではない、しかし熟女好きで、年上の女房を4人持つ下半身にだらしない男である。


ぶるるる

「なんか余計な事を見られた気分です」


ズキューン!


サモンの放った弾丸は1匹のグラップラーアントを仕留める


「後はまかせろ!」


ミュイミュイの目が赤く光る

氷によって動きがトロくなったグラップラーアントたちは片っ端から石となり砂として崩れ去る。



ルミはユミを抱きしめながら驚愕の表情で皆の戦いを見守る。

ケンタウロスが強いのは解っている、彼らは幾多の戦いで常に最前線で戦ってきた種族。

メデューサだってわかる、かつては神と戦ったほどの種族、その魔力は底をしれない。


しかし他は人間?鬼は聞いたことがある、ゴルゴンの東方の島に鬼という種族がいて、ミノタウロス族の戦士並みに力がある種族という噂。

他は・・・あの女性は魔女?キルケー様やパシパエ様はゴルゴンでも有名だけど、人間の魔女もいたなんて・・・

それに他は本当に人間なの?人間族によく似た私の知らない種族なの?


凄い、あの恐ろしいグラップラーアントの群れが次々と屍になる。ほかの大陸にはこんな種族が沢山いるの?


ビビビビビビ


けたたましい音が荒野に響く、すると一斉にアリたちが退却を始めた。


「どうする?追うか?」

トシイエが金太郎に聞く


「いや、やめておこう・・まず被害を見よう」


****


朝になり、ユミの血色もよくなってきた。


「お姉ちゃん・・ここは天国?」


「何言ってるの・・助かったのよ」


ルミはユミを再び抱きしめる


「では案内してくれるかい・・君たちの村に・・」

金太郎はルミに話しかける


馬車に二人を乗せて移動を開始した


道中に血痕があった、降りて調べる


まだ小さな手だけが残っていた・・・・


他の場所には指だけが残っていたり、髪の毛が残っていたり、子供の服と思われる物が残っていたりする。


実に悲惨な状況だ


やがて村が見え始める

村にもいたるところに血痕が残っている


剣を握る腕だけだったり、中身のある靴、首だけの女性、見るに堪えかねない光景だった


「生きている人はいませんか?」


返事は全くない・・・・


「グラップラーアント達は死体を切り刻み持ち帰る、その歯は鋼鉄をも切り裂く歯だ、どんな装備をしていても、死体になれば奴らのえさになる」


俺たちは散らばった肉片や死体の欠片を集め土に埋めた


少女たちには墓だけを見せるようにした・・それほどに悲惨な光景だ、水の魔法で血を洗い流す。

少女たちの家は焼けていた、村のいくつかの建物は焼けてなくなっている。


「グラップラーアントもアリだからな、火によって殺すために家に入ったグラップラーアントを家ごと焼き払う・・悲しいがそういう抵抗もしていたんだろう」

ケンタウロスは分析した


少女たちの両親の形見もみな焼けてなくなってしまったか・・・

「ああ!お母さんのペンダント」


ユミが道端からペンダントを拾う、それは赤い血がまだついているペンダントだった。

おそらくこの場所でアリたちは解体をしたのだろう・・・


俺は水の魔法でそのペンダントを洗った、綺麗になったペンダントをユミは泣きながら抱きしめ叫んだ

「お母さん・・・おかあさん・・・戻ってきてよ・・・どこ」


ルミは涙を流しながらユミを抱きしめる


そのほか遺品なども墓に集めた

ルミに村の人数を聞いて 土の魔法で墓を作る

村人たちの名前を書き火の魔法で焼き固めた、この墓は未来永劫この場所に残るだろう。

------


「ソノフの他に三つ目族の村はあるのかい?」

俺はルミに聞いた


「はい。西の山の麓にアマツ村があります、しかしその方向からグラップラーアント達は襲ってきました、東にはクスマの村があります、そこなら無事かもしれません」


ふむ・・・アマツ村も気になるが、クスマ村に危険を知らせるのも大事だろう、どうするか


「俺がアマツとやらに行ってくる、そうだなハムラがいてくれれば大丈夫だ」

トシイエが言う


分断も悪くないが・・移動手段が馬車一台しかない考え物だ



その時、無数の魔力反応を感じた、空か?


あれは・・・オリオン族か



オリオン族はざっと300を超える大編隊であった


「ツユキ殿達か・・アリたちが沸いた報告を受けた、夜、何人かの逃げ惑う子供を助けたが大地を覆うほどの大軍、この地に滞在するオリオンでは太刀打ちできない報告があって我らもまいった」


ザナトラは俺たちの前に出て状況を述べる


「アマツ村にはいったのか?」


「レーベンブローが200騎ばかし連れて向かっている」


「クスマ村は?」


「ゲンプファーが100騎ほど連れて避難誘導している」


「そうか・・・来るのが遅かったな・・このソノフの村はこの子供達だけだ・・・」


「申し訳ない・・ソノフの村の子供は5人ほど保護している‥名前はエマ・シエン・マリ・クミ・ケンだったな・・女の子4人に男の子一人だ」


ルミが叫ぶ

「エマ姉さんは生きているの?」


「うむ・・重傷だが命はとどめてる」


「シエンにマリにクミ、ケンも」


「うむ、バガライト!その時の事を話してやってくれ」


隊の中から一人の男が前に出た

「では、昨日の晩、大地が揺らぐ音がしたので見回りに飛んだら大地を覆う程のアリたちの群れを確認した、すぐさま駐屯地に知らせに行こうとしたら、

逃げ惑う子供と一人の女性がいた女性もまだ幼かったが三つ目族らしく魔法を使い逃げる子供たちを逃がそうと囮になっているようだった、もう一人、一緒に飛んでいたシエンビエンに子供たちを任せ、俺はその女性を助けました、酷いけがだった・・それでも女性は子供たちを助けてと・・・若いが強い女性だった・・・しかし駐屯地にはペガサス10匹にオリオン兵は20人ほどしかいない。

引き返した俺たちは一応ソノフの村に偵察に出たが、そこは既に地獄と化していた、戦っている者たちを助けようとしたが・・羽ありが現れた、羽アリの攻撃でシエンビエンのペガサスが大地に落ちた、そしてシエンビエンはその魔力も消失してしまった、俺は何とか逃げるしかできなかった・・・申し訳ない」


羽アリ・・・結婚飛行か・・・

アリは基本的にすべてがメスだが女王ありとその夫候補となるありが羽をもつ。

オスアリは羽アリしかいないというわけだが、繁殖条件は蟻によって違う、複数の女王をもつアリもいるし一匹の女王のアリもいる、働きアリが女王不在時に女王になるアリもいる。


厄介なのが複数の女王を持つアリと女王交代ができるアリだ・・

オスアリが狩りに加わるアリはあまり聞かないが・・ここは異世界だしな・・・

オスアリは女王アリほどではないが働きアリよりデカいのが前世界のアリだ、飛ぶだけで厄介なのに狩りをしてくるとは・・


「我らはオリオン族をかき集めた、ペガサス騎兵1000にオリオン地上部隊2000、現在ソドムとミノスにも応援要請を出している合わされば1万を超える軍勢になるだろう・・・しかしそれでも足りるかわからない・・・グラップラーアントの大発生は数千年に1度起きる、バガライトの報告が確かなら、大発生クラスの災害になる」


「みんな!俺たちも手伝おうと思うがいいか?」


「当たり前だよ父さん!」


「もちろん私も戦います!」


「私はいつでもキンタロウさんと一緒に戦います!」


「おう、こんな美しい少女の親が殺されたんだ!俺が黙っているわけないだろう」


「もとより!戦うことは鬼人の使命だ」


「乗りかかった船だよ、私だって魔女さアリなんかにゃ負けないわ」


「私だってゴルゴンの民だ!ゴルゴンの危機には立ち向かうさ!」


「私たちにできることは何でもやります!」


「僕は後方支援でお願いします」



みんな結束が高い、いい仲間だ!


「ありがたい、まずアマツの民をこの先の北方ソドム砦まで護衛する、その手伝いをしてほしい。

北方ソドム砦ならソドム兵500位駐在しているし、守りも固い、時間を稼げる、それにグラップラーアントは夜しか動かない、避難させるには今しかない」


俺たちはペガサスの誘導のもと、アマツの民と合流し北方ソドム砦に向かう

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